東電元役員「13兆円」賠償判決、実効性はほとんどなし?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
福島第一原子力発電所の事故を引き起こした、東京電力の旧経営陣に対する賠償金額は空前絶後の数値となった。なぜ東電の旧経営陣は個人として総額13兆円以上の賠償責任を負うことになったのかを確認していきたい。
「被告勝俣、被告清水、被告武黒及び被告武藤は、東京電力に対し、連帯して、13兆3210億円及びこれに対する平成29年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え」
福島第一原子力発電所の事故を引き起こした、東京電力の旧経営陣に対する賠償金額は空前絶後の数値となった。
これまでの巨額賠償事例で際立っていたのは、2019年5月に確定した「オリンパス」の粉飾決算事件にかかる株主代表訴訟であろう。この事例の判決では、当時の経営陣3名に対して、594億円もの賠償が命じられた。
他にも、相場操縦を手掛けるいわゆる「仕手筋」に違法な利益供与を行ったとして、蛇の目ミシン工業の旧経営陣5人に583億円の賠償判決が下っている。他にも、数百億円レベルの株主代表訴訟事例が目立つ。
今回4人に課された賠償金、13兆3210億円の内訳は、福島第一原子力発電所の事故によって東京電力が出費を余儀なくされた廃炉や除染作業の費用、そして被害エリアにおける住民への賠償金の補填に充てられる。
このように、企業の経営陣は会社や第三者に対して個人として責任を負わされるというリスクがある。特に、今回の事例では、放射能汚染という特殊な環境汚染を引き起こし、広範囲、長期にわたって多くの人々に損害を与えてしまったことで過去最高の賠償額となったのだ。
では、なぜ東電の旧経営陣は個人として総額13兆円以上の賠償責任を負うことになったのかを確認していきたい。
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