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只見線はどうなるのか 映画『霧幻鉄道 只見線を300日撮る男』主演・監督に聞く(前編)杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶJR東日本の只見線を、奥会津の風景とともに年間約300日、30年間以上も撮影し続けたのが星賢孝氏だ。氏の主演する映画『霧幻鉄道 只見線を300日撮る男』の全国展開が始まる。映画の魅力と只見線のこれからを、星氏、監督の安孫子亘氏に聞いた(前編)。

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東日本大震災で注目、だからこそ美しい風景を広めたい

――星さんから建設業界のお話をいただきました。安孫子監督も佐藤栄佐久元知事の事件を、ドキュメンタリー映画「『知事抹殺』の真実」として映画化されていらっしゃいますね。収賄額ゼロという前代未聞の「有罪判決」の真実を追究する作品でした。そういう社会派的な考え方も星さんに通じるところがあると思いました。

安孫子: それはありますね。物事を次の世代に伝えていきたい。そこにある宝物を掘り起こして磨き上げていく。今回は地域でリーダー力のある人にスポットを当てていく。作品が終わると次の主役の人に出会う。星さんもそうでした。こういう方が会津には多いんですよ。物の見方とか執着の仕方、継続性。会津の人たちにその伝統が息づいていると感じます。

――ステレオタイプ的ですけど、会津藩士の精神でしょうね。僕は安孫子監督の今までの作品を見たくて、配信サイトを探して、やっとオンライン上映を見つけました。『奇跡の小学校の物語』はYouTubeで予告編を見られますね。

安孫子: あの映画は、枯れかけた1本の桜の木をきっかけに、小学校を廃校の危機から蘇らせるっていう話なんですけど、あの校長先生には星さんに通じるところがあるんですよ。

――安孫子監督は東京にお住まいで、東日本大震災をきっかけに福島に移られたそうですね。

安孫子: 私が会津の大雨を知ったのは那須にいた時なんです。只見の水害を見に行きました。

――那須は映画にも出てきます。福島に行かれたのは東日本大震災のドキュメンタリー映画をつくろうと思われたわけですか?

安孫子: いいえ。最初に福島に行った時は全国からマスコミも映像関係者も来ていましたから、私は災害よりも、逆に美しい福島を撮影しようと思いました。伝統の息づいた福島。特にあの時は那須から福島に入ったので会津を通ったんです。会津の人たちは伝統的なものを大切にして、美しい暮らしをしていた。

 私にできることは、リスクを背負った福島の中で、美しい福島を撮ること。今回も典型的な、まさに美しい福島の作品だったと思います。

――ガレキがいっぱいで大変だとか、だから支援が必要だとか、そういう映像はもうたくさんの人たちが撮っている。安孫子監督は、もともとある美しいものを見ていただきたい。見に来てほしい。そして美しさを守っていこうと。

安孫子: 特に当時は、外国の方も福島に注目していました。世界は福島の惨状に興味を持っている。そのときに、こういう景色もあるから見に来てください。そして、その美しい福島が一瞬にしてカタカナのフクシマになってしまう。それを表現したいと思いました。

――安孫子さんは星さんの静止画を見て動画を撮るわけじゃないですか。この景色を動かそうって。

安孫子: 最初は「よしがんばって、この写真のような動画を撮ろうと思いました。でも年間300日も撮ってる人にはかなわない(笑)。


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