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「コロナ禍」見誤った中国火鍋チェーン「海底撈」、海外事業切り離しで立て直し? 日本でも大量出店のち休業浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(6/6 ページ)

中国最大の火鍋チェーン「海底撈火鍋」を経営する海底撈国際控股が、海外事業部門を分社し、香港証券取引所に上場申請した。同社はコロナ禍で大量出店する「逆張り」戦略が失敗し、直近の決算で巨額赤字を計上。国内外の同時改善は難しいと判断し、重荷の海外部門を切り離したようだ。

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 中国企業の海外進出は、「グローバル企業」としてのブランディングが第一のことも多く、多少の赤字は「広告費用」「ブランディング費用」と見なされる傾向にある。

 海底撈は20〜21年に中国の方針を受けて十分にマーケティングを行うことなく出店した結果、「横浜駅前と横浜中華街」「秋葉原と上野」というように、非常に近い商圏に複数店舗を開業しているように思える。

 しかし海外事業が独立採算となった今後は、当然ながら収益へのプレッシャーは大きくなる。

 海底撈は海外で中国人が多いエリアに店舗をオープンしてきた。それは間違った戦略ではないが、店舗が中国化し、その国の消費者を呼び込めないという課題にも直面している。米ロサンゼルスの店舗では客の9割を中国人が占めるとの報道もあり、日本でも7割が中国人だという。

 各国の店舗はメニューのローカル化も進めており、東南アジアでトムヤムクンスープ、「鍋をつつく」習慣が薄い欧米の店舗では一人鍋セットの提供を始めたという。日本は今年5月、「もつ味噌スープ」をメニューに追加した。


今年5月には日本限定でもつ味噌スープ(左下)も登場した(筆者撮影)

 中華料理は、世界の至る所に出店されている。都内でも池袋や上野、埼玉県西川口に中国語の飛び交う“ガチ中華”店が集積し、人気を集めている。しかしケンタッキーやマクドナルド、あるいは吉野家のように海外で大規模なチェーン展開に成功した中国本土の外食ブランドはまだ聞かない。

 海底撈の試練が、真のグローバル化のための産みの苦しみとなることを期待したい。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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