温泉でよく見るマッサージチェア トップシェアを勝ち得た企業がたどった「民事再生からの復活劇」:あんま王の挑戦【前編】(3/4 ページ)
最近、街に「白くて丸い」マッサージチェア、あんま王が増えている。発売元の日本メディックは、2011年に民事再生を受けたという崖っぷちの状況からV字回復し、業務用マッサージチェアのトップシェアを誇るまで成長した。この10年に何があったのか。あんま王を開発した日本メディックの城田裕之会長に話を聞いた。
重荷だった“数万円の出張修理”から解放 ファスナー式のパーツ交換
具体的には、どんな点で既存の製品と差別化をしたのか。城田会長には、業務用に特化したマッサージチェアを作るにあたって「絶対にやらなきゃいけない」と思っていたことがあった。それは、枕や背中のパッドなどのパーツの取り外し交換ができるチェアにすることだ。
「(家庭向けマッサージチェアの)一番の問題は、背中が破れたり、枕が破れたりすることです。家庭で使う分にはまずそんな症状は出ないです。ところが、業務用ですと大勢の方が使いますので、体に触れる部分の傷みが非常に激しい。修理も出張修理になって、縫製してあるパーツを一度外して、新しいものを縫い付けるといった作業が必要です。結果として、数万円の費用がかかる。これが(代理店の立場だった際に)非常に重荷だったわけです」と説明する。
この重荷を取り除くため、あんま王シリーズの全ての機種には、背中のレザーや枕などのパーツがファスナーやマジックテープで取り付けられている。パーツが摩耗した場合には、代替品を現地に郵送するだけで、簡単に取り換えられるように設計している。
さらに、何時間稼働したかを確認できるパワーメーターの搭載や、開始・終了時のスムーズなリクライニングなどの改良を行った。家庭用にない重厚感のある見た目もこだわった。
「1号機が出たら買ってやる」と話す、かつての同業者も
こうして、2012年に「初代あんま王」が完成した。販売先となる代理店は、かつての同業者で顔なじみも多かったことは有利に働いた。
会長は「お金のない時期ですから出張も大変でしたが、北海道から九州まで各代理店さんを回りました」と話す。開発時から全国行脚を始め、「1号機が出たら買ってやる」といった商談を取り付けながら、リリースへとつなげた。
もともと自社で抱えていた悩みを基に、業務用に特化して作ったあんま王は、他の代理店からも好評を得た。
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