温泉でよく見るマッサージチェア トップシェアを勝ち得た企業がたどった「民事再生からの復活劇」:あんま王の挑戦【前編】(4/4 ページ)
最近、街に「白くて丸い」マッサージチェア、あんま王が増えている。発売元の日本メディックは、2011年に民事再生を受けたという崖っぷちの状況からV字回復し、業務用マッサージチェアのトップシェアを誇るまで成長した。この10年に何があったのか。あんま王を開発した日本メディックの城田裕之会長に話を聞いた。
次々とアップグレード機種を開発 業界シェアは60〜70%へ
日本メディックは初代あんま王の成功に満足せずに、およそ3年ほどのスパンであんま王の新機種を次々と打ち出していく。最新機種は19年に発売した「あんま王4」だ。冒頭で紹介した「白くて丸い」マッサージチェアはこの機種にあたる(なお、黒色も販売しているが白色が人気とのことだ)。
次々と新しい機種を投入する理由は、代理店による施設へのマッサージチェアの設置が3年契約であることが多いからだ。特に集客が望める一等地の機械は新規に入れ替え、まだ使える機械は二等地に移動する。
「例えば、3年たってマッサージチェアを交換するときに、同じ機械で新しいものをいれても『また同じ機械?』と思われます。それよりも、『入れ替えてくれたんだね』って思ってもらった方がいいですよね」と城田会長は説明する。さらに利用客、設置施設、販売代理店の3者にとっての利便性を追求するため、機能やデザインもアップグレードをしてきた。
こうした努力の積み重ねの結果、現在の最新機種は4号機「あんま王4」となった。そして民事再生から10年間で、日本メディックは施設向けのマッサージチェア業界のトップシェアへと上り詰めたのだ。
ただ、正確なシェア率は分からないという。マッサージチェアは寿命が長く、大昔から同じ機械が動いているパターンもある。また、家庭用のマッサージチェアが競合となることから、業務用のみの売上高が判別しづらく、市場全体の把握が難しい。そうした理由で「正しいシェアは明確ではないんです」と前置きをしながらも、城田会長は「目立つところに入っているものとしては、60〜70%近くあるのでは」と説明する。
現在、力を入れているのはマッサージチェアのIT化だ。マシンにまつわる情報をオンライン上に集約して管理することで、運営する代理店の業務負担をさらに軽減する考えだ。17年には前職はシステムエンジニアだった息子の城田充晴氏が入社して開発に携わり、21年からは社長へ就任した。
次々と最新機種が生まれているあんま王は今後、どのようにマッサージチェア業界を変革していくのか。詳細は記事の後編(7月23日公開)で紹介する。
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