進化がすごい! 「白くて丸いマッサージチェア」を生んだ、圧倒的な差別化戦略:あんま王の挑戦【後編】(2/4 ページ)
最近、街に白くて丸いマッサージチェア「あんま王」が増えている。初号機の発売からわずか10年で、業界シェアのトップを占めるまでに成長したあんま王シリーズは、他の製品と何が違うのか? 開発の背景を聞いた。
「顔を見られたくない」「ベンチ代わりに使われている」も解消
包み込むように丸いビジュアルも最新機種のこだわりだ。人の往来が多い場所で利用する際に、「外から見られたくない」という声に応え、顔周りを深く包み込むようなデザインに加えて、フェースフードを備え、下すと外から完全に顔が見えないようにした。
こうした人がまるで個室の中に入り込むようなデザインも、他の製品との差別化ポイントになっている。
あんま王は業務用に特化したマッサージチェアだが、競合製品は家庭用と業務用を兼ねているものがほとんどだ。家庭向けの商品では、誰が乗っているか分かりやすく、乗りながらテレビや家族の様子などが見られる浅いつくりの製品が好まれるが、家の外でマッサージチェアに乗る際は周囲の視線から断絶された状態で乗りたいと思う人が多い。この違いを製品に反映させた。
さらに、音声機能も強化した。「お金を入れてください」「ご利用ありがとうございました」「次の方にお譲りください」といった音声を状況に応じて流すように設定できる。
これの機能は、提供施設の声から生まれた。
「これはずばり、居座り防止機能なんです。『ベンチ代わりに使われている』『たまり場になるから置きたくない』といった声を施設から聞いていました。お客から『ずっと座っている人がいるからどかしてほしい』とクレームを受けている施設もあったんです。この機能を使うと、座ってお金を入れない場合は15秒や30秒ごとに『お金を入れてください』とアナウンスを続ける設定もできます。すると、なかなか強固なメンタルを持っている方でない限り居座りはできなくなるわけです」(城田充晴社長)
マッサージチェアのIT化は、何をもたらすのか?
前職はシステムエンジニアで、ITに精通する城田充晴社長が肝いりで進めているのがマッサージチェアのIT化だ。
従来のマッサージチェアはコインタイマーを開けない限りどの程度使われているかが分からなかった。それを刷新し、コインが何枚入ったのか、何時間稼働したのか、今動いているのかどうかといった情報をオンライン上に集約できるようにした。
こうした情報をマッサージチェアの設置を担う代理店が閲覧できるようにすることで、さまざまな面から業務の効率化や売り上げの最大化ができるという。
例えば、「お金を入れたのにチェアが動かない」というクレームがあった場合。大半の場合は返却口にコインが戻っているものの、場合によっては曲がったコインが入ってしまい、詰まってしまうこともあるという。こうした場合に、お客との電話とオンラインに集まった情報を照らし合わせることで、現地に人がいなくても状況を判断し、隣の機械を無料で作動させるなどの適切な対処ができるようになる。
現地の状況も分からず、すぐに作業員が現地に向かえない場合は現金書留などで返金対応をしていたこれまでと比べても、数段にスマートな対応ができる。
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