進化がすごい! 「白くて丸いマッサージチェア」を生んだ、圧倒的な差別化戦略:あんま王の挑戦【後編】(3/4 ページ)
最近、街に白くて丸いマッサージチェア「あんま王」が増えている。初号機の発売からわずか10年で、業界シェアのトップを占めるまでに成長したあんま王シリーズは、他の製品と何が違うのか? 開発の背景を聞いた。
「1000円しか入ってなかった……」を防ぐ
オンライン上で情報が確認できることは、適切な集金タイミングの判定にもつながる。
「日本全国では、高速道路で片道2時間ほどかかる所にポツンと1軒だけマッサージチェアの設置場所があるという場合もあります。これまではお金を回収に行かないとどのくらい入ってるか分からないので『行ってみたら1000円程度しか入ってなかった……』ということもありました。それでは交通費で赤字になってしまいます。コインは本来、7万円分ほど入ります。カウンターが遠隔で見られることで、5〜6万円たまったら回収の予定を立てるなどの運用ができます」(城田充晴社長)
さらに、利用時間や料金もオンラインから設定ができる。よく使われている時間を分析して、平日などの顧客が少ない時間は料金を安くするなど、ダイナミックプライシングや期間限定のキャンペーンを遠隔で設定することを想定した機能だ。
コインだけではなく交通系ICやQRコード決済が使えるマッサージチェアも用意している。導入の負担金が大きくなるのでまだ設置を担う代理店から選ばれることは少ないというが、キャッシュレスが進んで「マッサージチェアに乗りたいけど現金がなかった」という人が増えていけば、こうした需要も進むだろう。
充電している間、マッサージ! 新しい顧客層の開拓
新しい使い方の需要を喚起するために、携帯電話の充電機能を備えたあんま王の実証実験も行った。駅に直結する施設に、乗っている間だけ充電できるマッサージチェアを置くと、スマートフォンが電池切れでモバイルsuicaが使えなくなってしまった人など、新たな顧客層からの利用があった。
こうした新しい施策を次々に生み出しているのは、化石化した業界を変えたいという社長の強い思いがあるという。
「今までマッサージチェアというと、お金を入れてマッサージしてくれるだけでした。コインタイマーのついたマッサージチェアが市場に出て約20年ほどですが、この間に進化のない状態が続いていました。そんな中で、マッサージチェアをネットワークにつなげることで、できることが増えてきました」(城田充晴社長)
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