ノジマやYKKは定年撤廃 シニアの戦力化が企業にもたらす恩恵とは?:シニアは本当に扱いにくい?(1/4 ページ)
少子高齢化が進む日本社会で、企業のシニア層の就業促進は待ったなしの課題となっている。シニアは「扱いにくい」とのイメージがひも付いているが、経験豊かなシニア層の雇用は企業にメリットももたらす。
会社が採用する際に「30代まで」など年齢制限を設けることは、労働施策総合推進法によって原則禁止されています。しかしながら、実際の採用現場においては「できるだけ若い方がいい」など、内々に年齢条件を設定しているケースがあります。
若手層にひも付くのは、「年齢が低いほど自社のカラーに染めやすい」「フットワークが軽い」「仕事や新しい技術の習得が早い」など、会社にとって扱いやすいイメージです。逆にシニア層には、扱いにくいイメージがひも付いてしまっています。
それらのイメージが勝手な思い込みや偏見であったとしても、長きにわたり多くの会社が、若手に優しくシニアに厳しい姿勢をあからさまにしてきました。45歳など一定の年齢以上で線を引いて早期退職を募集したり、能力に関係なく、一律に役職定年を設けているような会社は少なくありません。
その一方で、マクロ環境はどんどん変化しています。総務省の労働力調査によると、2021年の就業者のうち70歳以上の数は510万人。11年には285万人だったことを考えると、10年で2倍近く増えたことになります。50年前、1971年の92万人と比較すると5倍を超える数字です。
労働力調査をもとに、過去50年で年齢層別就業者比率がどのように変わってきたかを10年ごとに比較してみると、以下グラフのようになります。
71年に33.2%と最も多かった15〜29歳の比率が、21年には16.5%と半減しました。対照的に、70歳以上の層は1.8%から7.6%へと約4倍に増加しています。これらは、日本に起きている人口動態を如実に表す象徴的な数字です。
6月24日、時事通信は「4社に1社が導入済み『70歳まで雇用』の努力義務―厚労省集計」と題した記事を報じました。21年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、会社が70歳まで社員の就業機会を確保することが努力義務になったことを受け、実際に措置を講じた会社が25.6%だったとのことです。
記事では、70歳までの就業機会確保措置が「一定程度実施されている」と評価する厚生労働省のコメントを紹介しています。確かに、65歳までの雇用安定措置については法律上義務化されているものの、70歳までの就業機会確保措置はあくまで努力義務に留まるにも関わらず4分の1強で行われているというのは、それだけシニア層の活躍促進に前向きな会社が存在していることを意味すると言えます。
関連記事
- 氷河期支援、正規30万人増めざす→実績は3万人 国の施策が機能しない根本的な矛盾とは?
政府が直近3年間で就職氷河期世代の正社員を30万人増やす目標を掲げていたが、実績はわずか3万人に留まる。政府の施策のどこに問題があるのか。 - 社員に「空気読ませる」のはNG テレワーク時代に求められるマネジメントとは?
コロナ禍に伴うテレワークの定着で、チームマネジメントの在り方に変化が求められている。社員が成果を発揮するために必要なマネジメントの3つのポイントとは――。 - 悪質クレーマーは「排除の対象」と判断を――乗客怒鳴ったJR駅員の対応、弁護士はどう見る?
JR山手線の渋谷駅で、線路に財布を落とした男性が非常停止ボタンを押し、駅係員が激高する様子を映した動画がSNSで拡散し、波紋を呼んだ。身勝手な行動を取る利用客に対して、企業はどう向き合うべきなのか。 - 「インターンシップ」小手先のルール見直し アンフェアな就活モード“押しつけ”の現状
インターンシップを通して取得した学生情報を企業が広報・採用選考活動に活用することを可能にする政府のルール見直し。しかし、そもそもインターンシップは学生にとって仕事選びに有効な場になっているのだろうか。 - KDDI高橋社長の緊急会見 「賞賛」と「炎上」の分かれ道はどこにあったのか
大規模な通信障害を起こした通信大手のKDDI。総務省に早期の情報公開を促されて記者会見を開くなど、初動の遅れに批判が集まった一方で、会見で見せた高橋誠社長の説明にはネットユーザーを中心に評価の声が上がる。KDDIの緊急会見から、企業が教訓として学べることは何なのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.