ノジマやYKKは定年撤廃 シニアの戦力化が企業にもたらす恩恵とは?:シニアは本当に扱いにくい?(2/4 ページ)
少子高齢化が進む日本社会で、企業のシニア層の就業促進は待ったなしの課題となっている。シニアは「扱いにくい」とのイメージがひも付いているが、経験豊かなシニア層の雇用は企業にメリットももたらす。
しかし裏を返せば、まだ4分の3に当たる大半の会社が、70歳までの就業機会確保に積極的には取り組んでいないということです。先に示したグラフの通り70歳以上の就業率は50年で4倍に増えているものの、その比率は全体の1割にも届きません。60歳以上で見ると2割を超えますが、それでも60歳未満が全体の8割近くを占めています。だから、「シニア層の戦力化に取り組まなくても何とでもなる」と映るのかもしれません。
しかしながら、21年の60歳以上就業率21.4%という数字は、71年における50歳以上就業率である21.8%とほぼ同じです。一方で、71年の39歳以下比率57.2%は、21年の49歳以下比率57.4%とほぼ同じになっています。つまり、50年前と比較すると年齢層の比率は10歳分も上昇しているのです。そして、この傾向は今後もさらに続いていくと予想されます。
39歳以下の働き手は既に3割しかいない
国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、人口に占める21年の65歳以上比率は出生・死亡中位推計で29.1%。10年後の31年には31.3%、さらに10年後の41年には35.7%と上昇し続けます。(以下グラフ)
年々出生数が減少する一方、より人数が多い上の世代の平均寿命は上がり続けることで、今後も高齢層が占める比率は年を追うごとに高くなっていきます。これが少子化と高齢化が同時に進んでいる日本を取り巻く現実です。
就業者に占める39歳以下の比率が6割近かった50年前であれば、「30代までしか採用しない」などと言っても何とかなったのでしょう。しかし、39歳以下の比率が3割程度の現在において、その感覚のまま通用するはずがありません。
少しでも低い年齢層を取り込みたいという思考に、いつまでも支配されたままでいると、少子高齢化社会がもたらす年齢構成比の変化にジワジワと追い込まれながら、対応は後手に回ってしまいます。
そんな環境変化をものともせず、若手に優しくシニアに厳しい姿勢を維持し続けられる会社があるとしたら、常時就職人気ランキングに名を連ねているような、採用ブランド力が高いほんの一握りだけでしょう。それ以外のほとんどの会社は年々、環境変化に飲み込まれていきます。中には、人員体制の維持が難しくなって事業存続に関わるほど危機的な影響を受けてしまう会社も出てくるはずです。
いま採用難を感じている会社であれば、既に状況は待ったなしです。危機的な影響を受ける前に対策をとっておく必要があります。採用回りの対策としては大きく2つです。
1つは、採用ブランド力を高めて、求職者が押し寄せる人気企業を目指すこと。しかし、そのためには「高年収が得られる」「ネームバリューがある」「働きやすい」「やりがいが得られる」「企業イメージがいい」など、複数の好条件を兼ね備える必要があります。難易度が高く、かつ実績を重ねる必要もあるため時間がかかる選択肢です。
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