「サウナバスを作りたい」──上司の反対を押し切り独立、バス会社社員の熱い思い:バスでととのう(1/5 ページ)
引退したバスを改造したサウナの「サバス」が話題となっている。作ったのは、神姫バスから独立したリバース代表の松原安理佐さん。上司の反対も押し切り進めたというサバスの誕生秘話を聞いた。
現在、サウナが大きなブームとなっている。周囲でも「休日は何をしていますか?」と聞くと、「サウナが好きで、よく行きます」と答える人が増えた。
そんな中、ひときわユニークな「引退したバスを改造したサウナ」が話題となっている。3月に営業を開始した移動式サウナバス「サバス」だ。引退した路線バスの車両をサウナに改造。車内には休憩スペースとサウナ室を設けている。サウナ室には薪ストーブがあり、降車ボタンを押すと蒸気が発生する「ロウリュ」が楽しめるなど、本格的なサウナが体験できる。
「サバス」を作った松原安理佐さんは29歳。新卒入社した神姫バスの新規事業として、引退した路線バスを利用したサウナバスを着想した。しかし、初期費用が掛かりすぎると上司などには反対された。
松原さんはその反対を押し切り、出向起業の形で独立。サウナバスの完成までには、さまざまな苦労があったという。話を聞いた。
原動力は「新しいことがしたい」という思い
松原さんは、2015年に入社した際から「何か新しいことをしたい」という思いが人一倍強かったという。そのため、入社にあたり配属希望を聞かれた際も「バス事業以外が良いです」と答えて「バス会社の新卒なのに!?」と周囲を驚かせた。
入社後3年間は不動産事業部で、自社が持つ賃貸マンションやオフィスビルなどにまつわる業務を経験。その後、就活生だったころから興味を持っていた、新規事業の創発や既存事業の課題解決を担う事業戦略部に配属された。
ただ、求められていたのは新規事業を作る立場ではなく、新規事業を募集するコンペの運営など、間接部門的な働き方だった。「それはそれで楽しかったのですが、新規事業を提案してくれる社員が少なくて。応募がなく困ったタイミングで、『自分で何かをしてみよう』と考えました」と松原さんは話す。
当初はバスを使った取り組みではなく、全く新しい事業を想定していた。しかし、構想中に新型コロナウイルスが流行する。神姫バスの売り上げも下がり、新規事業のハードルが上がってしまった。それでも松原さんはめげずに「会社の遊休資産など、使えるものを使おう」と考え、引退したバスの改造というアイデアにたどり着いた。
松原さんはキャンピングカーやキッチンカーなど、“移動する施設”としての車の需要が高まっていることを知り、バスを何かの施設に改造しようと決めた。どういった施設にするかの検討は半年かけてさまざまな案を出したが、最終的に一番インパクトが強いサウナバスで決定したという。
「サウナバスに決めたのは、シンプルに『面白い!』と思ったからです。他のアイデアは『すでにありそう』と感じたのですが、サウナとバスの組み合わせは、バス会社が絶対に思い付かなさそうなアイデアだなと思い、決めました」
「サウナバスを作りたい」──アイデアは固まったものの、そこからが苦労の連続だった。
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