「サウナバスを作りたい」──上司の反対を押し切り独立、バス会社社員の熱い思い:バスでととのう(2/5 ページ)
引退したバスを改造したサウナの「サバス」が話題となっている。作ったのは、神姫バスから独立したリバース代表の松原安理佐さん。上司の反対も押し切り進めたというサバスの誕生秘話を聞いた。
周囲の賛同は得られず「怒られた」
これまでの仕事の中で「新規事業を自社で作っていく過程は知っていた」という松原さん。だからこそ、現状の計画では会社の許可を得られない、と悩んだ。
「事業計画書が書けませんでした。本当に空想に空想を重ねれば書けるのですが、(それでは許可が下りないので)書いても意味がないような状態でした。しかし、会社のお金を使うとなるとそうした事業計画面が重視されてしまいます」
松原さんの直属の上司は、新しいことをやりたいという熱意に理解があり「やりたいことをやればいい」と言ってくれていた。しかし、その上司もサウナバスのアイデアには反対していた。理由は費用が掛かりすぎるからだ。
サウナには、一般的なものでも800万円ほどの設備投資が必要となる。「上司からは『最初の事業としては、高額すぎる。バスにテーブルや椅子を置くだけでも使えるスペースになるんだから、そういう方向で考えた方がいい』と言われ、お金を掛けすぎだと怒られました」と松原さんは振り返る。
しかし、この時にはサウナバスを作りたいという松原さんの気持ちはすでに固まっていた。「会社の温度感やスピード感では、やりたいように進められない」──そう気が付いた松原さんは、新規事業向けの融資を探し始める。
そこで見つけたのが経産省の「出向起業等創出支援事業」だった。出向起業とは、自社内では新規事業に挑戦するのが難しい大企業の社員などが、雇用契約はそのままに自ら設立した新会社へ出向して経営者となる起業の形だ。
「このスキームだったら自分のやりたいことにぴったりだと思って、すぐに霞ヶ関の経産省まで行きました。バスを使う新規事業が、会社との親和性がありすぎて出向起業支援の対象となるか不安だったのですが、担当者に聞くと応募の対象に入ると言ってもらえたので、応募して審査を受けることにしました」
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