「サウナバスを作りたい」──上司の反対を押し切り独立、バス会社社員の熱い思い:バスでととのう(4/5 ページ)
引退したバスを改造したサウナの「サバス」が話題となっている。作ったのは、神姫バスから独立したリバース代表の松原安理佐さん。上司の反対も押し切り進めたというサバスの誕生秘話を聞いた。
工事では、予想外の事態に「絶望しました」
こうして資金を調達し、サウナバスの着工が始まった。工事は2カ月ほど、その後の車検などもあわせて4カ月ほどを準備に費やした。サウナバスの設計には、サウナ検索サイト「サウナイキタイ」の運営メンバーも参加。サウナ好きのお客が満足するよう、細かい部分までこだわった。
難しかったポイントは、改造後もバスを走らせられるようにすることだ。
「『移動できる』というのが大前提だったので、車検に通るように設計していましたが、それがかなりネックになりました。重さ制限があったり、備品の仕様が決まっていたりと、難しかったです。また走行中は結構揺れるのですが、工事中に完全には予測できないので心配していました」
実際に、失敗したのではないかと思うような事態もあった。
「海外から輸入したストーブが、空輸の遅れで最後に到着しました。サウナ室も出来上がっていて、最後に設置ストーブを入れ、煙突を突き刺すという段取りになりました。関係者で集まり、初めてサウナに火をつけたところ、サウナ室内がけむりで真っ白になってしまって。みんなで焦りました。初回の炊き出しだったから、空気がうまく循環しなかったということが後で分かり、2回目以降は普通にできたのですが、その時は完全に失敗したと思って絶望しました」
地元だけではなく、全国で話題に
こうしたさまざまなトラブルに見舞われながらも、サウナバス「サバス」は完成。22年3月に営業を開始した。初めて一般の利用者を募ったイベントでは、15社以上のメディアが現地に集まった。国内だけではなく、海外のメディアもあったという。
松原さんには、神姫バスでの新規事業関連の仕事を通して「新しいことをしてもこれまであまり大きなニュースにはならない」という悩みがあった。
しかし、「サバス」が話題作りに成功したのには「サウナイキタイ」の運営メンバーの協力も大きかったという。
「これまで(神姫バスで)新しいことをしても『地方の取り組み』としてローカル枠の情報となっていたのは、自社単独で取り組むからだと考えていました。そのため、バスを改造するときに『パートナーが必要だ』と思い、サウナ業界でお仕事されている方にひたすら連絡しました。その中で一番アイデアをくださったのがサウナイキタイさんで、一緒に取り組んできました」
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