SMBCとSBIの“似たもの提携”、見え隠れする「力技」と「したたかさ」の戦い:金融業界を揺るがす可能性(1/3 ページ)
三井住友フィナンシャルグループが、SBIホールディングスに約800億円を出資し、業務提携すると発表した。この発表は、単純に銀行、証券それぞれの業界をリードする企業同士の業務提携成立という事実にとどまらず、各業界内の序列や既存の提携関係にも影響を及ぼし、再編につながる可能性がある。
三井住友フィナンシャルグループ(以下SMBC)が、ネット証券最大手のSBIホールディングス(以下SBI)に約800億円を出資し、本格業務提携に動きだすという発表がありました。この発表は、単純に銀行、証券それぞれの業界をリードする企業同士の業務提携成立という事実にとどまらず、各業界内の序列や既存の提携関係にも影響を及ぼし再編につながる可能性をもはらむ激震レベルのニュースであると受け止めています。
今回の資本・業務提携はまず何より、SMBCが後れを取っていたネット証券分野での顧客基盤強化を狙ったという目的が明確に見えます。というのも、ここに来ての銀行業務の大きな変革に伴って、国内のマスリテール分野はリアル店舗の大幅な統廃合と共にWeb誘導による低コストでの取引基盤拡大は大きな戦略テーマであり、当該顧客基盤を有するネット証券との提携は有力な対応策のひとつとなってきたからに他なりません。
ネット証券でメガバンク2行に後れを取っていたSMBC
他のメガバンク2行の状況を改めて見ておきましょう。三菱UFJフィナンシャルグループ(以下MUFG)はグループ内の三菱モルガンスタンレー証券とは別に、カブドットコム証券(現auカブドットコム証券)に出資し、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)もグループ企業のみずほ証券がソフトバンクと共同出資してPayPay証券を運営しています。
これに対し、SMBCはグループ内にSMBC日興証券を有してはいるものの、ネット証券の領域ではメガグループとして完全に後れを取っていたわけで、今回の提携によって念願のネット証券との太い連携を手に入れたと言えるでしょう。
ネット証券におけるSBIの強さは言わずもがなです。契約口座数は850万件(3月末時点)を突破しそうな勢いにあり、auカブドットコム証券の同約140万件、PayPay証券の約30万件はその比ではありません。業務提携による相乗効果が生まれるならば、出遅れながらも形成逆転まで早期にありうる状況に一転したと言えます。
いきなり出し抜かれた形のMUFG、みずほFGは穏やかではないでしょう。今後は、ネット証券第2位で約770万口座を有する楽天証券や、約220万口座のマネックス証券などのネット証券大手が一体どこと組むのか、このあたりの動きも一気に慌ただしくなるのは想像に難くないでしょう。
SMBCからの出資、新生銀買収資金の補填に?
一方、今回の提携で見え隠れするSBIのしたたかさは、一筋縄ではいかないものを感じさせます。当然SBIは今回の提携によってSMBCの分厚い顧客層への切り込みをメリットとして見込んでいるわけですが、それ以上に目先にあるメリットは財務面です。
ここ最近のSBIは限界地銀複数行への出資に加えて、新生銀行の買収で約1000億円を投資しています。これは借入などによって賄ったわけで、今回の第三者割当によるSMBCからの約800億円はまさにその返済に充てられる予定と報じられています。
関係筋に今回の出資に関する舞台裏を取材すると、証券業務での提携を狙うSMBCはSBI証券への出資を申し出たものの、SBIは持株会社への出資にこだわり、SMBC側の要求を頑なに受け付けなかったといいます。
言ってみれば、SBIにとって今回の出資による財務内容の改善は譲れない狙いであり、目線を変えれば、新生銀行買収資金の大半をまんまと「SMBCから出させた」ことにもなるわけなのです。そのしたたかさには、敬服の念すら覚えます。
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