SMBCとSBIの“似たもの提携”、見え隠れする「力技」と「したたかさ」の戦い:金融業界を揺るがす可能性(3/3 ページ)
三井住友フィナンシャルグループが、SBIホールディングスに約800億円を出資し、業務提携すると発表した。この発表は、単純に銀行、証券それぞれの業界をリードする企業同士の業務提携成立という事実にとどまらず、各業界内の序列や既存の提携関係にも影響を及ぼし、再編につながる可能性がある。
ネット分野で出遅れた日興、相場捜査事件でガバナンス不全露呈
ただ、蚊帳の外に置かれた存在は、SMBC側にもあります。グループ証券会社のSMBC日興証券(以下日興)です。
日興といえば、古くから野村、大和と並ぶ3大証券の一角を占める名門であり、一時は米シティバンクグループの傘下にあったものの、SMBCが09年にこれを買収。グループ銀証連携戦略における証券業務の中核に据えたのでした。
日興は長い歴史に裏打ちされた分厚い顧客層を有しながらも、ネット分野への出遅れもあり、顧客層がやや高齢層に偏っており、若年層戦略が喫緊の課題となっていました。
そうした中、3月に日興で19年から21年にかけての取引先株式の相場操作という不祥事が表面化し、会社と佐藤俊弘副社長はじめ6人が金融商品取引法違反(相場操作)で起訴されるという事件が発生しました。
これは“氷山の一角”とも言われており、6月に公表された調査委員会の報告で「異常な状況」と断罪されるほどに腐った会社ぐるみの不祥事であり、昭和の「株屋」体質そのままのガバナンス不全が白日の下にさらされたのです。
SMBCとしては、こんな日興にグループ証券業務の将来を託すわけにはいかない、という事情が今回の提携を急がせたと考えられ、日興は完全に「蚊帳の外」に置かれる形となりました。
想起される過去の“やらかし” 大和・日興の幻の「メガ証券」構想
この関連でSMBCの日興関連の話で思い出されるのは、09年のグループ傘下入りの際に起きた大事件です。もともとSMBCは1999年から大和証券と資本・業務提携してグループ内証券会社に据えていました。
ところが09年の日興買収に際して、買収後に大和・日興を合併させ、業界ガリバーである野村証券に対抗できるメガ証券をグループ内に強引に作ろうとし、大和側から提携を解消されるという失態がありました。
旧住友から引き継がれたSMBCの、力でねじ伏せる企業風土を如実に表す出来事であったと思います。今回もまた、SBIと日興を強引にくっ付けるような荒業が出ないとも限りません。SBIの言いなりのままホールディングスに出資した裏には、そんな策略が隠れていてもおかしくないのです。
SBI・SMBC提携は一大パラダイムシフトの序章か
このように今回の資本・業務提携は、「したたかなSBI」と「力技のSMBC」の表向き協力体制に見えるものの、その実態は“ぶつかり合い”でもありそうで、まだまだこの提携がこの先どうなるのか予断を許さない状況にあると思います。
「蚊帳に外」に置かれたみずほ、日興の“負け組”の行方と共に、銀行、証券入り乱れて勢力地図が一気に書き換わるような「金融界の一大パラダイムシフト」の序章であるようにも思え、当面目が離せそうにありません。
関連記事
- ソニーの「着るエアコン」“バカ売れ” 猛暑追い風に「想定以上で推移」
連日の猛暑が続く中、ソニーグループ(ソニーG)が4月に発売した、充電式の冷温デバイス「REON POCKET 3」(レオンポケット3)の売れ行きが好調だ。同製品は「着るエアコン」とも呼ばれており、ビジネスパーソンを中心に売り上げを伸ばしている。 - “限界地銀“を食い物に? SBI「地方創生トライアングル戦略」の中身の薄さ
SBIホールディングスの北尾吉孝社長が5月の決算発表の席上、新生買収の大きな目的でもある“限界地銀”再生策としての「地方創生トライアングル戦略」を公表した。内容とともに、浮き彫りになったSBIの思惑を考察する。 - 餃子の王将「大阪王将の運営元とは別会社」 “ナメクジ事件”でレビュー荒らしの被害に
中華料理チェーン店「大阪王将 仙台中田店」(仙台市)で「ナメクジが発生している」とSNS上に書き込まれたことを巡り、王将フードサービスが運営する「餃子の王将」の店舗でもGoogle上のレビューが荒らされた。餃子の王将側は「運営元が異なる」と強調。同社広報は「目立った風評被害は出ていない」としつつ「餃子の王将と大阪王将は、資本関係も業務提携関係もない全く無関係の類似会社」と説明している。 - ダイキンが推奨するエアコンの風向きは? 節電のコツは「温度ムラの抑制」
猛暑が続き、政府が企業などに節電を要請する中、ダイキン工業が「電気代を抑えながら 快適に過ごすエアコンの上手な使い方」と称し、エアコンの節電方法をPRしている。 - 連日の猛暑、売れ筋の暑さ対策グッズは? ロフトに聞いた
猛暑が続く中、暑さ対策グッズに注目が集まっている。生活雑貨専門店「LOFT」(ロフト)を展開するロフト(東京都渋谷区)に売れ筋商品と、販売動向の変化について聞いた。 - テレビ朝日、家庭の電力使用量グラフから「テレビ」削除で物議 「丁寧さに欠けていた」
テレビ朝日が家庭の電力使用量に関するグラフを加工して番組で紹介したとして物議を呼んでいる。Twitterで拡散されている画像によると、番組ではグラフから「テレビ・DVD」の使用分(8.2%)をカットして放送していた。Twitterでは「捏造だ」「悪質すぎる」などの声が挙がっている。 - 野村総研、「テレビ消せばエアコンの1.7倍の節電効果」レポートに注意喚起 「11年前とは家電の性能が異なる」
野村総合研究所(野村総研)が11年前にまとめた「テレビ消せばエアコンの1.7倍の節電効果」と記載したレポート内容がTwitterで注目を集めている。これに対し野村総研は「当時と今では家電の性能が異なる。参考程度にとどめてほしい」と注意を呼び掛けている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.