インボイスネットワークに勝機 Sansanが請求書管理Bill Oneで目指す戦略とは(2/4 ページ)
各社がインボイス制度に対応した請求書受領サービスを推し進めている。そこには会計SaaSを中心としたマネーフォワードやfreeeはもちろん、新興のTOKIUMやバクラクブランドで展開するLayerXなど数多い。そして、名刺管理ソリューションを主軸としてきたSansanも、Bill Oneというサービス名で新規参入した1社だ。
Bill Oneが重視するインボイスネットワークとは?
「インボイスネットワークを確立したい。なぜネットワークかというと、請求書のやりとりを効率化していけるから。ここが最終的な差別化要素になってくる」と、Bill One事業部の大西勝也事業部長は言う。
Bill Oneに関わる企業数を増加させるため、同社は複数の施策を立て続けに進めている。まず、21年5月に、従業員100人以下の企業向けに月間100枚までの請求書対応を無料化した(記事参照)。さらに7月には、請求書の発行機能の提供も始めた。こちらは有料プランのみだが、一括で複数社宛に電子的に発行でき、代理郵送機能も備えている。
請求書受領サービスを導入した企業、請求書発行サービスの導入企業、それぞれがインボイスネットワークの一員だが、仕掛けはそれだけではない。秘密は受領側のBill Oneサービスにある。
受け取り側のBill One導入企業が、取引先企業に「請求書を送ってくれ」と伝える際に、Bill Oneに直接PDFファイルをアップロードできる機能がある。取引先がこれを使うときにはBill Oneのアカウントを作る必要があるため、受領側1社につき周囲の取引先が利用することでインボイスネットワークが拡大していく。
「Bill Oneでは電子化を促すような作りにしてある。『全社一括で紙で』という方針の会社は別だが、『営業担当が紙で送っている』という会社には、受領側のユーザーが声をかけ、紙での送付、メール送付、ファイルのアップロードを選択できる仕組みにしている。送付側に負担をかけないようにしているので、直接アップロードが増えている」(大西氏)
このようにして、インボイスネットワークに参加する企業は4万1000社にまで拡大し、取引額は5月単独で6700億円を超えた。Bill Oneを導入していなくても、Bill Oneが取引を捕捉できている範囲が、ここまで拡大したということだ。
関連記事
- Sansan通期決算、ARR198億円 クラウド請求書受領BillOneはARR14億に
Sansanは7月14日、2022年5月期の通期決算を発表した。ARRは22.9%増加して198億円。新規事業である請求書受領サービスBill Oneは、計画を大幅に超過する成長を見せた。 - 請求書版「それ、早く言ってよ〜」 Sansan、中小企業にクラウド請求書受領サービス「Bill One」を無料提供
Sansanは5月27日から、クラウド請求書受領サービス「Bill One」を従業員100人以下の企業に無料で提供を開始した。大企業に比べて遅れているという中小企業のDXを促進することが狙いとし、「中小小規模事業者がDXに取り組むには十分。そんなオンラインの成功体験をまずは提供する」(寺田親弘社長)という。 - Sansan、「請求書発行機能」を単体サービスで提供開始 インボイス制度に対応
Sansanは7月7日、クラウド請求書受領サービス「Bill One」において、オプション機能として提供していた請求書発行機能を、単体サービスとして提供すると発表した。2023年10月のインボイス制度の導入に伴った、電子請求書への切り替え需要の高まりに対応する。 - Sansan、請求書受領サービスBill One好調 ARR7億超え
新規事業である請求書受領サービスのBill Oneが好調に推移した。21年11月末時点でMRRは6100万円に達した。ARRに換算すると7.3億円となり、22月5月末には10億円を目指すとしている。 - 経費精算とインボイス受領のTOKIUM、35億円調達で「請求書受領市場のリーダー目指す」
経費精算やインボイス受領のSaaSサービスを提供するBEARTAILが3月31日に社名、ブランド名を「TOKIUM」に変更した。その上で、4月19日には35億円の資金調達を発表。黒崎賢一社長は「請求書受領クラウド市場のリーダーになりたい」と意気込みを話した。 - 支出管理SaaS目指すバクラク、Zoom用、Google広告、AWS用に個別番号発行可能な法人カード
「バクラク」ブランドでバックオフィス向けSaaSを提供するLayerXが、法人向けカード事業に乗り出す。名称は「バクラク ビジネスカード」。8月からオンラインで発行するバーチャルカードの提供を開始し、年内にはプラスチックカードも提供する計画だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.