背景にパワハラ気質も 日野自動車、03年から20年にわたり不正 社長「3カ月めどに進退明らかに」:排ガス・燃費データ不正(1/2 ページ)
日野自動車の排出ガス・燃費データで不正が発覚した問題をめぐり、日野は8月2日、特別調査委員会がまとめた調査報告書を公表した。これまで不正があった対象期間は2016年秋以降としていたが、調査の結果、03年10月からおよそ20年にわたって不正が続いていたことが判明した。
日野自動車の排出ガス・燃費データで不正が発覚した問題をめぐり、日野は8月2日、特別調査委員会がまとめた調査報告書を公表した。これまで不正があった対象期間は2016年秋以降としていたが、調査の結果、03年10月からおよそ20年にわたって不正が続いていたことが判明した。小木曽聡社長は「長年にわたる信頼を裏切り、誠に申し訳ございませんでした」と謝罪。経営責任については「責任の所在を見極めた上で、3カ月を目途に明確にしたい」と話した。
2日、特別調査委員会が開いた記者会見。委員長の榊原一夫氏は、「上意下達で上に物が言えない」「過去の成功体験の大きさゆえに、変化することや自らを客観視することができない」――など、日野の企業風土の問題点を厳しく指摘した。
日野は今年3月、小型や中型、大型のトラックやバスに搭載されている4種類のエンジンに関し、排ガス性能の劣化耐久を確認する試験などで、不正行為があったと発表。不正があった対象期間は16年秋以降としていた。
組織が縦割り、部分最適に捕らわれ
しかし、2日に公表された調査報告書では、排ガスについては少なくとも、03年10月以前から不正が行われていたことが判明した。車両用ディーゼルエンジンで▼劣化耐久試験を実施していない▼測定点とは異なる時点で排出ガスの測定を行う▼測定結果を書き換える――などの不正行為が認められた。
また、16年4月に国土交通省が自動車メーカー各社に対し、認証取得の際の排ガス・燃費試験に不適切な点がないか調査し報告するように求めたのに対し、日野は、不適切な事案はなかったと報告。この時、日野は試験の過程を調査し、一部のデータに齟齬が生じていたにも関わらず、データを書き換えるなどし、認証試験が適切だったかのように装っていたという。
こうした問題が起きた背景として、報告書は「みんなでクルマをつくっていないこと」「世の中の変化に取り残されていること」、さらに「業務をマネジメントする仕組みの軽視」の3点を原因として指摘した。
具体的には、「組織が縦割りで、部分最適の発想に捕らわれて全体最適を追求できていない」「上意下達の気風が強すぎて風通しの悪い組織となっている」「規程やマニュアル類の整備が十分でなかった」――などと説明している。
そのうえで、日野に対し、「目指すべきクルマづくりの在り方について議論を尽くすこと、品質保証部門の役割の明確化と機能強化、法規やルールの改正動向の把握と社内展開、開発におけるQMSを適切に構築し、その有効性を絶えずチェックし、必要であれば改善すること」と提言した。
関連記事
- 救急隊が売店利用「かつては通報された」 市民に協力求める消防局のSNS発信に反響
救急隊に食事の時間を――。さいたま市消防局が7月26日に発表した呼び掛けが、SNSで反響を呼んでいる。夏場に出動の機会が増え、救急隊が食事を摂る時間が減っているとして、コンビニエンスストアなどでの飲食物の購入に理解を求める内容だ。 - ブランド失墜――セサミの人気キャラ「黒人の少女を拒否」 誤った対応、経営リスク招く恐れも
米国の人気子ども番組「セサミストリート」をテーマにした遊園地で、黒人の女の子2人をキャラクターが拒否して通り過ぎたように見える動画がSNSに投稿され「人種差別ではないか」との批判が集まっている。遊園地側は「誤解を招いた」として謝罪した。 - 悪質クレーマーは「排除の対象」と判断を――乗客怒鳴ったJR駅員の対応、弁護士はどう見る?
JR山手線の渋谷駅で、線路に財布を落とした男性が非常停止ボタンを押し、駅係員が激高する様子を映した動画がSNSで拡散し、波紋を呼んだ。身勝手な行動を取る利用客に対して、企業はどう向き合うべきなのか。 - 刺身に電気を流して「アニサキス」撲滅 苦節30年、社長の執念が実った開発秘話
魚介類にひそむ寄生虫「アニサキス」による食中毒被害が増えている。この食中毒を防ぐため、創業以来30年以上に渡り、アニサキスと戦い続けてきた水産加工会社がある。昨年6月、切り身に電気を瞬間的に流してアニサキスを殺虫する画期的な装置を開発した。開発秘話を社長に聞いた。 - KDDI高橋社長の緊急会見 「賞賛」と「炎上」の分かれ道はどこにあったのか
大規模な通信障害を起こした通信大手のKDDI。総務省に早期の情報公開を促されて記者会見を開くなど、初動の遅れに批判が集まった一方で、会見で見せた高橋誠社長の説明にはネットユーザーを中心に評価の声が上がる。KDDIの緊急会見から、企業が教訓として学べることは何なのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.