背景にパワハラ気質も 日野自動車、03年から20年にわたり不正 社長「3カ月めどに進退明らかに」:排ガス・燃費データ不正(2/2 ページ)
日野自動車の排出ガス・燃費データで不正が発覚した問題をめぐり、日野は8月2日、特別調査委員会がまとめた調査報告書を公表した。これまで不正があった対象期間は2016年秋以降としていたが、調査の結果、03年10月からおよそ20年にわたって不正が続いていたことが判明した。
パワハラ気質も背景に
会見では、経営陣が不正を認識していたかどうかについても質問が及んだ。榊原氏は、「個別具体的な不正行為を認識していたと認めるに足りる証拠は見つからなかった」と説明した。
一方で、相互のチェック体制の未整備や、開発スケジュールに十分な配慮がなかった点などを指摘した上で、「目標を達成しようという強い指示が役員からあり、そういった部分では問題があったのかなと思う」と指摘した。
日野の「パワハラ気質」が不正を招いたのでないかとの質問も挙がった。委員の島本誠氏が「報告書に記載した通り、ある程度あったと認定している。企業風土として下から上に物が言えない、上司の指示命令に対して上意下達になっていた」と指摘した。
小木曽社長「3カ月を目途に進退明らかに」
特別調査委員会の記者会見に続き、小木曽聡社長も会見を開き、「多くのステークホルダーの皆さまに多大なご迷惑とご心配をおかけし深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」と深く頭を下げた。
小木曽社長は、不正が20年に渡り続いた背景について、「経営が現場に寄り添えず、適正なプロセスよりもスケジュールや数値目標が優先されやすい環境と仕組みになってしまった」と説明した。
さらに、▼内向きで保守的な組織風土▼一人ひとりが当事者意識と一体感をもって仕事に取り組むことができない状態▼会社組織としての業務マネジメントの意識・仕組みも十分ではなかった――などと組織の問題点を挙げ、「経営の責任は重大であると認識している。報告内容を真摯に受け止め、責任の所在を見極めたうえで厳正に対処する」と話した。
日野は3月に公表した不正で、16年以降に製造された約4万6000台のトラックでリコールを届け出ている。今回、特別調査委員会の調査で新たに不正が判明したことで、不正の対象車台数は47万7000台に上り、リコールも拡大する見通しだ。
小木曽社長は今後、品質マネジメント体制構築や企業体質の改善、管理監督機能の強化をはじめとするガバナンス体制確立について検討を進めるという。その上で、「推進に向けた執行体制も含め3カ月をめどに取りまとめる」と説明。「再びステークホルダーに信頼していただけるよう、真に生まれ変わるための変革に強い覚悟をもって取り組んでまいります」と話した。
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