通信障害で返金のKDDI、増収減益の今後の行方 焦点は金融と法人:房野麻子の「モバイルチェック」(3/3 ページ)
KDDIは7月29日、2023年3月期第1四半期決算の説明も行った。障害が起こったのは7月2日なので、当然、この決算に影響は出ていない。約款に基づく返金とお詫びの返金合わせて総額73億円の会計処理についても現時点では確定していない。なお、社長の高橋誠氏は売上増加やコスト削減の「経営努力でカバーする」と語り、業績予想は変更していない。
金融事業、どう取り組む?
通信キャリアの金融事業については、競合に動きがある。ソフトバンクとZホールディングスがPayPayを連結子会社化し(記事参照)、PayPayの収益化を目指す一方、ドコモはスマートライフ事業の成長加速に向けて「スマートライフカンパニー」を新設、柔軟でスピーディな経営を目指すとしている。
一方のKDDIは、金融関連事業を束ねる「auフィナンシャルホールディングス」を19年に設立している。金融事業は積極的に進めており、auじぶん銀行の住宅ローンやクレジットカードのau PAYカードの伸びは「非常に順調。成長の源泉になっていくと思っている」(高橋氏)と期待を寄せている。
一方で決済のau PAYについては「少額決済の事業を黒字化するのは大変。PayPayさんも同様なのかなと思う」(高橋氏)とまだ時間がかかるとの認識だ。
KDDIは前中期経営戦略の「通信とライフデザインの融合」を経て、新中期経営戦略では「5Gを中核に据えた事業変革の推進」を掲げている。「通信と(ライフデザイン事業を)本当に近づけたい」という狙いから、組織的にはau PAYや、コンテンツやサービス、サポートを提供するauスマートパスをコンシューマ区分に入れたという。「本当に通信との融合を目指す分野と、金融領域で伸ばしていく分野を分けてやっていく」(高橋氏)と説明した。
高橋氏は、先日発生させてしまった通信障害を踏まえ、「お客様の信頼回復と5G時代を見据えた通信品質向上に向けた体制を強化し、持続的成長に向けた取り組みを推進していく」とまとめた。
大手MNO3社は揃って法人や金融事業に注力し、通信収入以外の収益の比率を上げようとしている。KDDIも5Gを中心に据えつつ、2桁成長を続ける企業のDX支援が収益を引っ張って行きそうだ。73億円の返金を経営努力で挽回できるか、第2四半期以降の業績が注目される。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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