日本のステーブルコインはガラパゴス化する 法整備進むも規制厳しく:金融ディスラプション(1/2 ページ)
国内でも6月にステーブルコインを規制する改正資金決済法が成立した。これにより発行や流通に関して、法的な枠組みが整備されたことになる。しかし、その中身を見ると制約が非常に厳しく、海外のステーブルコインが日本に入ってくるのは現状難しい。
6月にステーブルコインを規制する改正資金決済法が成立した。海外で急速に取り扱い高が増加するなか、国内ではこれまで取り扱いが不透明だったステーブルコインだが、これにより発行や流通に関して、法的な枠組みが整備されたことになる。
しかし、その中身を見ると制約が非常に厳しく、海外のステーブルコインが日本に入ってくるのは現状難しい。国内では、日本独自のステーブルコインしか扱えず、「ガラパゴス化してしまう可能性が高い」(7月まで仮想通貨取引所Kraken Japanの代表を務めた千野剛氏)という状況だ。
ステーブルコインの発行と流通について法的整備
ステーブルコインとは、法定通貨に価値が連動した仮想通貨を指す。海外では、テザーUSD、USDコイン、バイナンスUSDなどが発行され、それぞれ時価総額で仮想通貨ランキングの3位、4位、6位を占める。発行額は合計約18兆円規模と巨額だ。取引所で法定通貨の代わりに使われるほか、コストが安くて高速な海外送金ニーズ、またDeFiにおけるロック資産などに使われる。
しかし国内ではなかなか利用が進まなかった。国内の仮想通貨取引所が取り扱える仮想通貨は法的には「暗号資産」に限定される。法定通貨と価値が連動した法定通貨建て資産は暗号資産ではないとされており、ステーブルコインを取り扱えなかったためだ。
今回の法改正で、アルゴリズムで価値を安定させる仕組みのステーブルコインは暗号資産の枠組みで取り扱い、「法定通貨に連動していて、裏付け資産をバックにして償還を約束されているような電子決済手段」(Fintech協会常務理事の落合孝文氏)がステーブルコインとして規制対象となることが決まった。
規制の内容は、発行と流通に関して法的な枠組みを整備したことだ。発行については、従来どおり銀行預金または資金移動業者が行えるほか、信託会社が信託受益権を用いる仕組みも今回認められた。
流通については新たに「電子決済手段等取引業者」が設けられた。これは、ステーブルコインの仲介者として、利用者保護やマネーロンダリング対策を行う主体となるものだ。暗号資産でいう、取引所にあたる。
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