気温35度でも「溶けにくいアイスクリーム」発売 開発のきっかけとなった“切実な事情”とは:新規事業でチャレンジ(3/3 ページ)
業務用食品卸の会社が、溶けにくいアイスクリームを発売した。きっかけとなったのは、同社の社員が病院や高齢者施設で聞いたある悩み事だった。開発担当者に背景を聞いた。
食べた人に知ってもらいたいこと
5月末からネット通販を開始した溶けにくいアイスに対して、どのような声が寄せられているのか。藤井さんは「あるカフェの方からは『摂食嚥下障害の人にも向いている』と評価してもらった」と説明する。主に、食事を飲み込みにくい人や、液体でむせてしまう人などに提供しやすいと捉えるユーザーもいるようだ。
藤井さんはさまざまな事業者に向けて、溶けにくいアイスの用途提案を進めている。例えば、移動販売のキッチンカーや、野外でのキャンプシーンでは、溶けにくいアイスには需要があるかもしれない。また、飲食店のランチセットで、食事と一緒にアイスが提供できるようになることも、アピールポイントになると考えている。パフェに使えば、きれいな状態が長く保てるというメリットもある。
藤井さんは「摂食嚥下障害の人だけでなく、普通の人が食べてもおいしいと思えるものを目指してアイスを開発した」と力説する。値段はやや高いが、原料にこだわることで味を多くの人に評価してもらう狙いがある。
また、栄養士による食事支援の考え方をもっと広く普及させたいという願いも商品に込めている。栄養ケアが必要なのは高齢者だけではない。妊婦や子どもにも役立つ情報が提供できると藤井さんは説明する。溶けにくいアイスを開発した背景にあるストーリーを通して、困ったときに栄養士に支援してもらえることを知ってもらえればというのが藤井さんの願いだ。
現在、同社の業務用ルートを通じて、カフェやホテルのお土産屋などにも溶けにくいアイスをアピールしている。徐々に拡販を進めている段階だが、新しいニーズを掘り起こすことができるか。
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