気温35度でも「溶けにくいアイスクリーム」発売 開発のきっかけとなった“切実な事情”とは:新規事業でチャレンジ(2/3 ページ)
業務用食品卸の会社が、溶けにくいアイスクリームを発売した。きっかけとなったのは、同社の社員が病院や高齢者施設で聞いたある悩み事だった。開発担当者に背景を聞いた。
品質にもこだわった
通常のアイスと比べて価格が高いのは、品質にこだわったからだ。例えば、「白」には京都丹後産のジャージー牛乳をそのまま使用している。ミルクが濃厚で、クリーミーな味わいを追求した。「赤」には、奥京都の廃校をリノベーションした場所で栽培しているイチゴをぜいたくに使ったイチゴソースが入っている。
開発のきっかけは、摂食嚥下(えんげ)障害の高齢者などに向けて食事を提供する人たちの声だった。摂食嚥下障害は、そしゃく能力の低下などが原因で、ごはんやおやつをうまく食べられなくなる状態を指す。病院や高齢者施設のスタッフは、食事をゼリー状にしたり、ミキサーにかけたりすることで、なんとか食べてもらおうとしている。しかし、食欲がわかないといった理由で完食してもらえないケースもあり、栄養面での課題があった。
アイスクリームは冷たくて食べやすいので、そうした人に提供するのに向いている。しかし、病院や施設では配膳するのが基本なので、食べる前に溶けてしまうという課題があった。液体の状態では、むせてしまう人もいる。
厚生労働省によると、要介護(要支援)認定者数は、20年3月末時点で約668万人いる。また、摂食嚥下障害は要介護高齢者の18%にみられ、そのうちの40%は在宅高齢者だという報告もある。悩んでいる人は決して少なくはない(出所:平成26年度摂食嚥下障害を有する高齢者に対する地域支援体制の取組収集、分析に関する調査研究事業報告書)。
藤井さんは、自社の新規事業を創出するため、福知山市の起業家人材育成プログラム「NEXT産業創造プログラム」に応募。摂食嚥下障害に関する現場の声を聞いていたこともあり、溶けにくいアイスクリームの開発に取り組むことになった。
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