サイバーエージェント「初任給42万円」の衝撃とからくり:”固定残業制”の表裏(1/5 ページ)
サイバーエージェントは7月末、2023年春の新卒入社初任給を42万円に引き上げると発表した。他社と比較し、高い給与水準であるのは間違いないが、同社が採用している固定残業制の「数字の見せ方」には気を付けるべきポイントがある。どういうことかというと……。
サイバーエージェントは7月末、2023年春の新卒入社初任給を42万円に引き上げると発表した。
令和3年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)によると、一般的な大卒者の平均初任給(残業代・賞与別)は22万5400円。微増傾向にあるとはいえ、バブル経済が崩壊した1992年頃から30年間にわたってほぼ変化していない水準といえる。そのような中、同社は平均の2倍近い額面金額となる異例の増額を実現し、広く注目を集めているようだ。
そもそも同社の初任給は他社と比しても高額で、22年春入社の場合、年俸を12分割すると月額34万円という設定だ。エンジニア職採用においては一律の初任給を廃止しており、高い技術力を持つ人材は新卒でも月額60万円以上の給与を得られるようになっている。
現時点でも十分高い水準のように感じられるが、同社はさらに23年度から、営業などのビジネス職やクリエーター職の初任給を一律で月額8万円(23.5%)引き上げ、42万円とした。技術力に応じて給与を設定するエンジニア職でも、37万5000円だった下限を同様に42万円に引き上げた。このように職種にかかわらず高い水準の待遇を実現しようとしているのだ。
この取り組みはおおむね好感をもって受け止められており、「社会的にもインパクトのある素晴らしい施策」「この金額が上限ではなく『下限』というのがすごい」「ウチの会社もこれくらいの水準を目指したい」などと称賛されていた。
同社では増額分の人件費として約2億6000万円程度の負担増を見込んでいるが、好調な業績によって2000億円近く積み上がっている現預金の一部を充てて賄う考えで、業績にさほどの影響もないという余裕の構えだ。
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