「今のオフィスは丸ごと捨てる!」 財務省出身の社長が力づくで働き方を改革したワケ(1/5 ページ)
省庁を退職し、民間企業に招かれ取締役になる――これだけならよく聞く“天下り”の話だ。しかし、招かれた企業で時に反感を買いながらも、強力にペーパーレス化、働き方改革を推し進めているとなると、単なる天下りとは言えないだろう。財務省出身の日本電算企画・横江社長が実施した“力づくの働き方改革”とは?
省庁を退職し、民間企業に招かれ取締役になる――これだけならよく聞く“天下り”の話だ。
しかし、招かれた企業で時に反感を買いながらも、強力にペーパーレス化、働き方改革を推し進めているとなると、単なる天下りとは言えないだろう。
日本電算企画の横江宏文代表取締役社長は、1989年に大蔵省(現財務省)に入省し、2016年に退職するまで、主に会計事務の機械化などの情報システム畑を歩んできた人物だ。
退職後、招かれた日本電算企画は、中央省庁や独立行政法人向けを中心にシステムインテグレーションサービスを提供する企業だ。同社は、意外にも紙とハンコ文化から抜け出せずにいた。
横江氏はこれまで、どのように働き方改革を進めてきたのか。役人時代を振り返りつつ、同社での取り組みについてうかがった。
今のオフィスは丸ごと捨てる 入社半年で決断した改革
横江氏は、16年に日本電算企画に入社。各拠点を回りながら会社の様子を把握し、半年後に常務となった。最初に手掛けたプロジェクトが会社の引っ越しだ。
「本社に紙と鉛筆の文化がそのまま残っていました。霞ヶ関ではずっと見ていた世界でしたが、こちらの社員の机の上にも紙が山積みで『ここは本当にIT企業か?』と思いました。ノートPCはセキュリティのためにワイヤーで机に固定。オフィスは役員を含めた管理部門とSEたちが別々の部屋にいて、互いに様子が見えない作り。なぜこんなことをやっているのかと驚きました」
オフィスを改修する手もあったが、広いスペースに稼働率20%そこそこの会議室が5つもあり、無駄が多いことから引っ越しを決断。社内各層から担当者を募ってプロジェクトチームを作った。
その引っ越しで横江氏から示したコンセプトは「ゴミ箱1つ持っていかない」だ。古い文化を引き継がないように、PCも什器(じゅうき)も1つのゴミ箱さえも、捨てる決心で引っ越しのプロジェクトを進めた。
「今のオフィスは丸ごと捨てる。ついでに見もしない書類ゴミは全部捨てろと指示しました。ホコリを被ったダンボール箱が置いてある倉庫もあって、みんながそれをチェックし始めたのですが、今さら見てどうするのかと(笑)」
横江氏は、当時を振り返り「会社を空気ごと変えたかった」と話す。新オフィスの方針は、50代の部長から20代の若手社員までそろうプロジェクトチームで議論し、オフィス家具のショールームも一緒に回った。それこそ椅子の座り心地まで確認し、「どうしたら“今風の会社”にできるか」を検討していったという。
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