退職か、働かないおじさん化か──50代社員を“用済み”扱いする社会のひずみ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
大手企業に勤める男性は、52歳で会社から早期退職を勧められた。さらに異動も命じられており、残された選択肢は、退職か、働かないおじさん化か──。男性のインタビューから、「働かないおじさんの問題」の正体に迫る。
今回はまず、大手企業に勤める大和さん(50代男性)の話をお読みください。
うちの会社は52歳になるとセカンドキャリア研修を受けさせられます。通称“肩たたき研修“です。研修のことは、先輩からも聞いていたので「まぁ、仕方ないなぁ」と考えていました。
ところが、それだけで終わりませんでした。そのあと上司との面談があって、早期退職に希望するかどうかを聞かれたんです。これはさすがにショックでした。というか、怒りを感じました。
つい先日までかなり多忙で、会社からの期待も受け、順調に過ごしていたんです。なのに突然、別セクションに異動を命じられ「早期退職するという選択もあるけど……」って。つまり、私は用済み、と言われたんです。怒りに任せて、早期退職に応募します、と言いそうになりました。でも、いったん、頭を冷やした方がいいと、グッとこらえました。
おそらくこのままだと、異動先でかなり暇な職務に就くことになります。客観的にみれば、もう居場所はないわけですから、やめた方がいいですよね。50歳過ぎての転職は厳しいけど、用済みと言われた会社で、くすぶってるよりましです。
ただ、自分ではもう少しこの会社でやりたいことがある。やり残した仕事といってもいいかもしれません。毎年、55歳をすぎた社員が数人、関連会社に再雇用されます。社内の選抜試験にさえ合格すれば、面接の切符をもらえます。再雇用先の会社の役員面接です。
他社からも受ける人がいますし、年々狭き門になっているのですが、そこまで踏ん張ろうかな、と考えています。
周りからは、会社にしがみついてると思われるでしょうし、会社は70歳までの雇用が努力義務化されているので、必死で追い出しにかかるでしょうけど。
以前、河合さん(筆者)が「自分が思うほど周りは自分に興味はない」って言ってたので、その言葉を信じで、やりたいようにやろうと思います。
本当に「働く側に問題がある」のか?
このところ、やたらと「働かないおじさん」というワードを、目にするようになりました。
私の記憶では、この不名誉かつ辛辣(しんらつ)なネーミングは、2014年に「追い出し部屋」が社会問題になった頃から使われています。当時は「使えないおじさん」「フリーライダー」と表現されることもありました。
今から8年も前の出来事です。なのになぜ、再び、「働かないおじさん」アゲインなのか?
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