IT駆使して人気だった「ブルースターバーガー」なぜ閉店? プロが指摘する「接客不要」の落とし穴:長浜淳之介のトレンドアンテナ(7/7 ページ)
外食DXの成功例としてもてはやされた「ブルースターバーガー」。完全キャッシュレス、非接触のスタイルが画期的だった。行列ができるほど人気だったのに、なぜ全店閉店に追い込まれたのか。
その歴史的意義とは
テーブルチェックやChompyのような、ITを活用して外食を支援する企業が登場した今日では、個人店でもやり方次第でDXが可能になってきた。ブルースターバーガーはその流れを示唆した点で、歴史的意義があった。
谷口氏によれば、オンライン予約システム導入により24時間予約受付が可能となった。その効果として、閑散期のケーキの注文数が1.5倍になったパティスリー(神戸市「ラヴニュー」)や、ランチタイムの集客が2回転から3回転に上がった予約制豚カツ店(大阪市「とんかつ乃ぐち」)もあるという。
電話がつながらずに取りこぼしていた顧客を、オンライン予約で拾えている。しかも、予約電話からの解放で店員が料理や接客に専念できる、働き方改革につながっているかが重要。ブルースターバーガーが残念だったのは、効率優先のため店員の労働が調理ロボット化し、顧客との接点もできず、疎外が進んだことだ。
しかし、ブルースターバーガーは、まだ郊外のドライブスルーを試していなかった。また、どの店も家賃が高い駅前の一等地に店を構えていたが、テークアウトが中心ならば二等、三等立地で良かったのではないかとの疑点がある。キャッシュレス決済に慣れた外国人には受けたはずで、インバウンドが本格的に再開されていれば、結果は違っただろう。
商品の評判は上々だったのだから、何度も上陸と撤退を繰り返してようやく軌道に乗った「バーガーキング」や「ウェンディーズ」のように、諦めず再チャレンジしてほしい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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