なぜ現場で働く人が不足しているのか 「コロナのせい」ではないワケ:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
コロナに感染してしまった。濃厚接触になって出社できない。こうした理由で、「現場で人が足りない」といった悲鳴の声がでているが、原因は本当に「コロナ」なのか。筆者の窪田氏は、違う見方をしていて……。
「賃上げ問題」に向き合う覚悟
冒頭の「日本人はマジメだからコロナが少なかった説」が分かりやすいが、日本人は何か深刻な問題が起きると、目の前にあって、非常に分かりやすくて、自分たちのプライドが傷つかないような理由を強引にこじつける悪いクセがある。今回もその典型だ。
人手不足を「コロナのせい」にしておけば、誰も傷つかない。日本企業の99.7%を占める中小企業に賃上げをさせる、なんて面倒くさい問題に手をつけなくていい。「賃上げなんかするより税金をタダに」みたいなバラマキを望む勢力から叩かれることもない。とりあえず政府の悪口を言っておけばいいのでラクだ。みんな仲良く平等に貧しくなっているので、恐怖感も危機感もそれほどない。実は今の日本は「何もしない」が一番ハッピーに生きられる。
マスコミはよく「日本は働く人が足りない」「人手が足りない」とあおるが、実はわれわれ日本人に本当に足りないのは、「低賃金重労働」という日本人がずっと依存し続けてきた構造的な問題に、真正面から向き合う「覚悟」なのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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