日本の会社も“他人事”ではない トランプ前大統領のスパイ容疑:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
自宅に家宅捜索が入った米国のトランプ前大統領だが、公文書の持ち出しや文章改ざんの恐れという法律違反に加えて、スパイ防止法違反の容疑も含まれている。ここ数年の同氏の怪しい動きとは……。
トランプ氏に起きていること
まずはトランプ氏に何が起きているのか簡単にまとめてみたい。
米国では、大統領など要職にあった人たちが任期中に職務で使った書類やメールなどはほとんど公文書として扱われるため、そうした書類やデータは、米国公文書館に保管される。関係者などには、そうした情報をきちんと保管しておくことは民主主義のプロセスにとって重要なものという認識がある。
さもないと、後で政策立案などを検証する場合に重要な書類の所在が不明になったり、改ざんされたりすることになりかねない。そんなことがまかり通れば、民主主義そのものだけでなく、国家の信頼すら揺らぎかねないからだ。
発端は2022年1月、トランプ氏が退任時にホワイトハウスなどに置いておくべき書類が、マルアラーゴになぜか保管されていたことが判明した。引っ越しの際に、大量の書類の中でたまたま紛れてしまった可能性もある。ということで、公文書記録管理局は段ボール箱15個分の書類を回収したところ、その中には機密となるような書類が含まれていたことが判明している。
当時、トランプ氏自身は「管理局に協力できたのはうれしいことだ」と、強がりともとれるコメントをしている。ただ問題はそこで終わらなかった。
春頃には、米司法省とFBI(米連邦捜査局)の捜査員らがマルアラーゴを訪問し、あらためて機密文書について、残っていれば提出するよう要請している。しかし提出はなかった。
8月8日になると捜査が進展し、FBIが家宅捜索に踏み切った。その日、トランプ氏は不在だったが、SNSで金庫まで開けられて捜索されたと主張している。トランプ氏と関係者らは、当局が刑事司法の制度をトランプ叩きの「武器」として悪用しており、トランプ氏が24年に大統領選に出馬して勝利するのを妨害しようとしていると吠えている。ただFBIは、事前にアポをとったと主張する。
こうした混乱を受け、メリック・ガーランド司法長官は、自ら捜査令状を申請したと述べ、また捜査令状の公開を決めた。さらに、司法省側の言い分では、27箱分という押収された文書には「核兵器関連」もあり、一刻も早く押収しないと、国家の安全保障を脅かす可能性があったという。加えて、トランプ氏に関しては、透明性を持って捜査しないと陰謀論が渦巻くかもしれない懸念もあっただろう。
公開された捜査令状によれば、今回のトランプ氏への容疑には、公文書の持ち出しや文章改ざんの恐れという法律違反に加えて、スパイ防止法違反の容疑も含まれている。
機密情報を持ち出したことによる容疑は分かるが、なぜスパイ防止法違反まで指摘されているのか。
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