HYDEが“兄貴”と慕う「画狂人 井上文太」が画集を出版 「承認欲求を捨てないとアーティストは成功しない」:先行販売で異例の売り上げ(4/5 ページ)
HYDEさんが企画とプロデュースを務めた画集『閃き 〜 INSPIRATIONS 〜 画狂人 井上文太』が、先行販売ながら異例の売れ行きを見せている。その裏には30年以上前の著者の井上文太さん、HYDEさん、そして2人が「先生」と呼ぶ金子國義画伯の不思議な出会いと、それぞれの軌跡があった。
承認欲求を捨てないとアーティストは成功しない
井上さんは、すぐに売れることだけを良しとする日本のアート業界の風潮に、危機感を抱いている。現代ではインスタグラムなどのSNSが普及し、アーティストにとっては世界中に作品を発信できる環境が整った。その一方で、インターネット上の反応を気にするあまりに、作り手が自らのスタイルを確立できていない葛藤もうかがえる。
井上さんは「承認欲求を捨てないとアーティストは成功しない」と話す。
「承認欲求が強すぎると、有名になったらそれが一番と思ってしまいますよね。そして有名になって好きなことをするために同じものを生産する。でも、どこかの時点で、見ている人は“飽きる”わけじゃないですか。それでいったん落ちると、ネットで『いま何が流行っているのか』を探す。そうすると結局、普通のものしか生まれません。結果的に落ちっぱなしになります。
だから誰かに褒められても反応が薄くても、自分のインスピレーションを信じ切って好きなものだけを作っていく姿勢が必要だと思います。僕は、『いま人が分からないのは、早すぎたのだから仕方ない』って思っていましたが(笑)。
だって金子先生やHYDEなど尊敬する人と今も付き合いができているのだから、間違った生き方はしていないし、ダサくない。周りを見て自分を信じ続けたり、情熱を燃やしたりすることができています」
多くの人に受け入れられるために何が売れているのかをマーケティングし、現状を分析する姿勢は欠かせない。だが一方で、目の前の動向にだけ対応し、売れたものをいくらまねたとしても、そのコピーしか生みだせないのも事実だ。
作り手が面白いと思うものを信じて、ブレずに作り続ける姿勢――。井上さんが、これまでの画家人生で貫いてきた哲学は、ヒット商品の開発を担う企業担当者にも参考になるはずだ。売れるものを目指した結果、どこにも刺さらないものができてしまうのは本末転倒なのだから。
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