なぜクルマの電装用バッテリーはリチウムにならないのか:高根英幸 「クルマのミライ」(4/4 ページ)
レース用の小型軽量な高性能バッテリーを除けば、クルマの電装用バッテリーは依然として鉛酸バッテリーが圧倒的な主流となっている。なぜか?
主役続く鉛酸バッテリー
鉛酸バッテリーはバッテリー液が蒸発して補水の必要がある。解決策として、外部との空気口を複雑化することで水分を還元する構造とすることでロングライフで補水不要としたMFバッテリーは、今や大部分のクルマやバイクに使われるようになった。しかしインジケーターで状態を確認するなど点検は必要だし、補充電してやることで寿命を延ばすことができる。
むしろ補水できる従来の鉛酸バッテリーの方が、メンテナンスできるユーザーにとっては費用負担も少なく、長寿命化を図れるのだが、そんなユーザーは極めて少数派であろう。
EVがようやく市民権を得ようとしている現在でも、鉛酸バッテリーはクルマにとって無くてはならないモノとして、まだ当分は電装用バッテリーの主役として使われ続けるだろう。リサイクルによって大半の鉛はまた有効に利用され続けることから、鉛酸バッテリーによる環境問題は、少なくとも先進国では起こり得ない。
リチウムイオンバッテリーの電解液が水溶性になったり、全固体電池が電装用バッテリーとして利用されるまでは、事態は変わらないだろう。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
関連記事
- 厚切りジェイソン、ツイート全消し 米国株下落で非難殺到か?
タレントの厚切りジェイソンさんが、運営するツイッターの投稿をすべて消したことが話題になっている。22万人あまりのフォロワーを持つ人気アカウントであり、影響力は大きかった。削除の理由は明かされていないが、同氏が推奨してきた米国株投資に逆風が吹いているためではないかと見られる。 - 4000万円が92万円まで減少も? 急増する“レバナス信仰”の裏に隠れた投資信託「負の側面」
小さい資金でも比較的短期で資産形成ができるとして、一部の投資初心者から人気を集めているレバレッジ型の投資信託。しかし、この類の投資信託は、本来であれば長期投資には全く向いていない。上昇相場においての破格のリターンがクローズアップされがちだが、その裏に隠れたリスクを見過ごして運用をしてしまえば、顧客の人生計画は大きく狂いかねない。 - 10万円もする「iPhone13 mini」がなぜ1円? そのカラクリを解明する
新生活が始まる春は、スマホが年間で最も売れる季節といわれる。最近は量販店で「iPhone 13 mini」や「iPhone 12 mini」が「実質23円」や「一括1円」と表示されていて話題になった。なぜ10万円もするiPhone13 miniの販売価格が1円となるのか? - 東電元役員「13兆円」賠償判決、実効性はほとんどなし?
福島第一原子力発電所の事故を引き起こした、東京電力の旧経営陣に対する賠償金額は空前絶後の数値となった。なぜ東電の旧経営陣は個人として総額13兆円以上の賠償責任を負うことになったのかを確認していきたい。 - パナ、ダイキン2強体制に異変? 2022年最新エアコントレンド
シーズン本番前に、エアコンの最新事情と昨今のエアコンを取り巻く状況などを解説する。また家庭用エアコンは、長くパナソニック、ダイキンを2強として、三菱電機や日立、富士通ゼネラルがそれに続いていた。しかし、近年注目を集めているのは新しいメーカーだ。 - 日本にも“金利上昇”到来で、住宅ローン契約者の4人に1人が破たん予備軍に?
金利市場は日銀の利上げをやや織り込みはじめている。住宅ローンをはじめとしたさまざまな「金利」のベースラインが上がるイベントである「利上げ」。これが日本で実現する日がくれば、主に住宅ローンを組んでいる国民にとって大きな痛手となり得る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.