ドムドムハンバーガー驚異の復活 風向きを変えた「3つの出来事」:あの店は今(2/4 ページ)
「このままなくなってしまうではないか」と悲観されていた、ドムドムハンバーガーが復活し注目を集めている。最盛期の90年代には全国400店以上にまで拡大したものの、閉店が相次ぎ30店舗以下に。しかし、2020年度から最終黒字に転じて息を吹き返し始めた。その背景には何があったのか──?
「ファストフードだからできない」と考えない商品づくり
ドムドムハンバーガーの再建を目指し、藤崎氏はさまざまな施策に取り組んできた。そんな中で、特に印象に残っている出来事が3つあるという。
1つ目は19年秋に発売した「丸ごと!!カニバーガー」の大ヒットだ。こんがり揚げたソフトシェルクラブを1匹丸ごとバンズに挟んだ豪快なビジュアルからSNSで話題となり、たちまち売り切れが続出した。
この商品から注目を集めるようになった同社の一風変わったメニュー開発のこだわりは、「ファストフードだからできない」といった固定概念にとらわれないこと。
実際「丸ごと!!カニバーガー」は調理工数の多い商品だ。非加熱の冷凍ガニが店舗に届く。それを流水解凍し、水を切ってしっかりと拭き、粉を付けて揚げるという段取りは通常のファストフードでは考えられないほど時間がかかる。
「ファストフードだからできること・できないことを考えてしまいがちですが、そういうことは気にせずにお客さまが喜んでくれるものを作ろうと考えています」と藤崎氏は話す。
想定の2倍売れた、田村ゆかり氏イベントコラボ
2つ目は、人気声優・田村ゆかり氏の幕張メッセで実施するイベントへの出店だ。
キッチンカーでの出店打診があったものの、当時同社ではキッチンカーを持っておらず、出店費用もかさむことから「社内ではすごく反対意見が多かった」という。
それでも藤崎氏が出店を試みたのには理由がある。それは、ドムドムハンバーガーには古くからスーパーの中で営業している店舗が多く、客層が限定的だったことだ。再建に向けて新しい施策を試していくためには、これまでの客層にとらわれない人々の意見が必要となる。イベントへの出店で、今後の開発の参考になる反応が得られるのではないかと考えた。さらに、声優のファンはSNSとの親和性も高いため、どのような発信をしてもらえるかにも興味があった。
イベントに合わせて、田村ゆかり氏をイメージした「ゆかりチキンバーガー」を開発。柴漬けとゆかりの粉末を使ったピンクのタルタルソースが特徴の商品だ。1日500食の売り上げを目指していたところ、初日で目標の2倍の約1000食を販売。何とか在庫をかき集め、2日間のイベントで約1900食を販売した。
「SNSに写真をアップするお客さまが多く、それを見てさらにどんどんお客さまが集まって。『反応を知りたい』という目的も直に達成できました」(藤崎氏)
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