男鹿市で“オサケ特区”は実現するのか 「日本酒」参入がほぼ不可能な理由:水曜日に「へえ」な話(4/4 ページ)
「日本酒を造りたい」――。このように考えても、酒税法の関係で、新規参入することは難しい。そんな状況の中で、これまでになかった動きが出始めている。ひょっとしたらひょっとして、変化が生まれる予感もしていて……。
ゴールは「男鹿市の再生」
最後に、特区を始める2つめの理由について、紹介しよう。
男鹿市で日本酒を造る人たちがたくさんやって来れば、競争が予想される。人口2万5000人ほどの街に、醸造所がたくさんあれば共倒れの危険性もでてくる。
しかし、岡住さんは「ビジネス面での支援も考えていて、困ったときには助けたい。事業計画書をつくるのが苦手であれば、手伝ってあげますよ」と笑っていた。競合に手を差し伸べていたら、自社の売り上げに影響がでるのではないか。この質問に対し、「そこは気にしない」という。どういうことか。
日本酒を造れるようになって、それが売れたとしよう。それでも、会社の売り上げ構成比でいえば、10%ほどになっているのではないかという。いまは「日本酒をつくる」ために動いているが、最終的な目的はそこではない。日本酒をきっかけに、「男鹿市の再生」をゴールに考えているのだ。
その一歩として、醸造所の隣にレストランをオープンした。少しでも地元が盛り上がればという気持ちで始めたようだが、先ほど紹介したように、人口はどんどん減っている。駅前の一等地を見ても、閑散としている状況だ。かつては、旅館もあって、ラーメン店もあって、パン屋もあって、ほかにもさまざまな店が並んでいた。福岡で生まれ育った岡住さんは、なぜ店のシャッターが閉まっているのか気になったので調べてみた。
市民の声を集めたところ「ラーメンを食べたい」「パンを買いたい」という意見が多い。しかし、店がない。閉店した理由を調べたところ、「売り上げが見込めない」とか「赤字が続いているから」ではなく、「(高齢などによって)疲れたから」という声が多いことが分かってきた。
そんな話を聞いているうちに、「自分もラーメンを食べたい」と感じるようになってきた。しかし、誰もやってくれない。であれば、「自分たちでラーメン店を始めればいいのではないか」と考えて、23年4月に店をオープンする予定だ。
「参入障壁」「市場縮小」「人口減少」――。解決しなければいけない課題は、とてつもなく大きい。しかし、ラーメン店を始めることを決めたように、“誰もやらなければオレがやる”姿勢は続けていくようで、本人もこれからどうなっていくのかよく分からないようだ。
数年後の男鹿市は、どうなっているのか。
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