台湾の有力スタートアップがいま、日本を目指す3つの理由:なぜ中国ではないのか(3/3 ページ)
台湾の有力なスタートアップが近年、相次いで日本進出を果たしている。今夏、新興30社超が東京に集い、台湾政府が後援する日台スタートアップ交流イベントも催された。なぜこのタイミングなのか。そして、巨大なマーケットを持つ中国ではなく、日本を目指す理由は何なのか。
同社は、2014年に国家戦略特区の指定を受けてスタートアップ誘致に注力する福岡市との交流を機に、同市への拠点設置を決めた。創業者の郭建甫CEOはもともと、日本を車でドライブしたり、日本ドラマを見たりするのが好きで、日本文化への親しみも大きかったという。
一方、同社は中国への進出は「開発コストの負担が大きい」として見送ってきた。郭氏は「中国はクラウド状況が台湾や日本と異なり、特有の規制も多く、開発コストが二重にかかる。もし中国に進出していれば、サービス規模を現状ほどまでに拡大することはできなかったかもしれない」と語る。
クラウドだけでなく、中国ではFacebookやTwitter、LINEなどのSNSも規制があり利用できない。マーケット規模は大きいが、閉鎖的なインターネット環境が進出をためらわせる要因となっているようだ。
「日本市場は台湾スタートアップにとって最適」
日本と台湾は近年、良好な関係を築いてきた。2011年の東日本大震災で台湾から多額の義援金が届けられたことを機に、日台のつながりは以前に増して深まった。双方で災害などの不幸な出来事が発生するたびに、手を差し伸べ合う光景は今も続く。
こうした良好な関係性に加え、日本のデジタル強化の動きが台湾スタートアップの背中を押す。ビジネス環境やクラウド環境が異なる中国への進出は、経営基盤が十分ではないスタートアップにとっては、コスト面のリスクが大きい。「文化的な馴染みがあり、かつ成熟した日本市場は、安定的にビジネスを展開したい台湾スタートアップにとってはすごくフィットする」とiKalaの程世嘉CEOは語る。
7月に開催した「日本・台湾スタートアップサミット」への手応えをもとに、台湾側は今後、日台のスタートアップ企業や戦略的投資家らとのつながりを深めるため、常態的なコミュニケーションルートの構築を目指すとしている。双方が手をつなぎ、グローバル市場をリードしていくための新たな歩みが始まっている。
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