偉ぶる「若手管理職」を生み出さないために 「脱・年功序列」成功のカギは?:NTTも20代で管理職可能に(1/4 ページ)
NTTをはじめ、20代でも管理職起用の道を開く企業が増えている。しかし、単に制度を導入するだけでは年少者に年長メンバーが反発するなど軋轢も生じうまくいかない。「脱・年功序列」を成功するために企業が注意すべきことは何か。
8月26日、読売新聞は「NTTが『脱・年功序列』、20代でも管理職に…昇格に必要な勤続年数の制限撤廃へ」と題した記事を掲載しました。現在は課長級に就くまで15年程度の期間を要するのに対し、新制度の導入によって20歳代での昇格が可能になるとのことです。
記事には「『脱・年功序列』を進め、専門性の高い人材の育成や確保を目指す」と、その意図が記されています。テクノロジーの進化は著しく、経営を取り巻く環境変化の速度は日増しに上昇する一方です。また、人材獲得競争は激しくなっており、過去の慣習に束縛された硬直的な組織のままでは不利な状況に置かれてしまいます。
もし、経営環境の変化に適したスキルを持つ人材がいたとしても、管理職になるまでに必要な勤務年数に到達していないという縛りがあることによって陣頭指揮をとらせることができないとしたら、会社組織にとって死活問題にさえなりかねません。そう考えると、これまでの慣習を覆して年少者を管理職に積極登用する流れが今後増えていったとしても、決して不思議ではないように思います。
その一方で、管理職に求められる役割は、専門性の高い知識やスキルを習得することとは性質が異なる面があります。管理職の役割は、担当する部門の責任者として組織を率い、成果を最大化させることです。管理職が個人としてどれだけ専門的なスキルを有していたとしても、部門全体の成果が上がるとは限りません。逆に、管理職個人の専門スキルには秀でたものがなかったとしても、メンバーを上手く統率して部門全体の成果を上げられるのであれば役割は果たすことができます。
NTTグループでは課長級に就くまでに15年程度かかるそうですが、15年という時間がかかる背景としては、社歴の長さからくる箔(はく)や人生経験など、管理職として組織を率いるのに必要と考えられてきた要素を多面的に磨き上げるための熟成期間のような意味合いがあったのではないでしょうか。
20代で管理職に昇格させる制度を導入するからには、熟成期間を置かなくても管理職に必要とされてきた要素を身に着けられるような手法を新たに検討する必要が出てきます。しかしながら、社歴や人生経験といった要素には、どうしても一定以上の年数が必要です。そうすると、20代のような年少者を管理職に昇格させる制度を導入するには、社歴や人生経験は長くなかったとしても管理職としての役割が果たせるような環境を職場の中に構築しなければならないということになります。
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