9年連続、年間50社超が福岡市に拠点を設置 選ばれ続けるには“理由”があった:躍進する福岡市(前編)(1/2 ページ)
福岡市はコロナ禍が始まるずっと前、2002年から企業誘致に取り組んできた。その取り組みが実を結び、直近は9年連続で50以上の企業の誘致に成功している。約1週間に1社が福岡の土地に降り立っているという計算になる。継続的に企業を誘致できる方法とは?
2020年9月、パソナグループが東京・大手町にある本社機能の一部を兵庫県の淡路島に移すと発表したことは大きな話題を呼んだ。当時は「島流しだ!」という声もあったほどだが、長引くコロナ禍で企業が東京から地方に拠点を設置、もしくは一部機能を移転する動きは加速度的に進んでいる。国も自治体も、さまざまな助成や税制優遇で企業の地方移転を後押しする。
福岡市はコロナ禍が始まるずっと前、02年に立地交付金の制度を設けるなど企業誘致に取り組んできた。年間50社の企業誘致、それに伴う3000人の雇用創出を目標に掲げている。実際に、同市は直近9年間、年間50社という数字を達成し続けている。地方における企業誘致施策の成功の秘けつについて、福岡市 経済観光文化局 創業・立地推進部 企業誘致課 企業誘致係長の楠本賢司氏と江澤法征氏に取材した。
年間50社ということは、約1週間に1社が福岡の地に誕生するという計算になる。9年連続達成は偉業と言えるだろう。もちろん、「50社集まれば何でもいい」というわけではない。同市は、政策推進プラン内で「成長分野の企業や本社機能の立地の促進」を掲げている。その定義に当てはまる企業でないといけないというわけだ。
同市は、「成長分野の企業」をITや医療、環境といった第3次産業の企業と定義した。これは産業の成り立ちに大きく関係している。同市は政令指定都市の中で唯一、一級河川がなく、第1次・第2次産業が発展してこなかったという歴史がある。戦後、重工業が日本の産業の中心となった時代に雇用を生み、街を発展させるためには、第3次産業の発展が必要不可欠だったのだ。このような背景を受け、成長性を鑑みて第3次産業企業の誘致に注力し続けたことが、冒頭の年間50社という結果に結びついている。
これまでに福岡市が誘致した企業の内訳を見てみると、13〜21年ではIT・クリエイティブ系企業が56%と半数を超えるという。またコールセンターの数も多く、直近では金融系企業の数も増えている。
また「本社機能の立地」の代表例としては、21年にジャパネットホールディングスが人事・経理などの主要機能の一部を移転したことが挙げられる。同社はもともと福岡に縁があったわけではないものの、土地の良さや住環境に魅力を感じての進出決定だったという。
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