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泥沼化していた「シダックス」買収問題はどうなる? 社内対立、コロワイドの撤回、オイシックスの狙い長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

泥沼化していたシダックスの買収問題。コロワイドが提案を撤回したことが明らかになったが、今後どうなっていくのか。

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TOBが不発に終わる可能性も

 今回のTOBで特殊なのは、シダックス創業家と出資者のユニゾンの間において、2019年5月17日付で、株主間契約書が締結されていたことだ。この株主間契約書では、創業者がユニゾンに対して、ユニゾンが所有するシダックスの株の全部を、創業家または創業家が指定する者に対して売却するように請求できる権利、つまり売却請求権が設定されている。

 今回のオイシックスのシダックス株のTOBは、この売却請求権を創業家が行使した。


オイシックスは有機野菜を中心にした、宅配で伸びてきた(出所:オイシックス公式Webサイト)

 オイシックスは売却請求権に基づき、ユニゾンは保有株式を売却する義務が発生すると主張している。

 オイシックスの広報では、「TOBを粛々と進めるだけ」としているが、ユニゾンが強く抵抗しているので、TOBが不発に終わる可能性が高まっていた。しかし、コロワイドの撤収で事態は一変した。

 不思議なのは、シダックスに聞いても、「コロワイドのこの点に期待する」または「オイシックスのこの点には期待できない」という、協業した際のメリット・デメリットが何も聞こえて来なかったことだ。大戸屋の時は、創業家がコロワイドの店舗を気に入っており、コロワイドのビジネスモデルに対しての信頼があった。

 ユニゾンに「オイシックスの何が不満で、コロワイドのどこを推しているのか」と聞いてみたが、「全く事実ではない憶測(おくそく)に基づいたご質問であり、そのような事実はない。また、弊社はシダックスへの提案について賛否を示す立場にはない」との回答だった。

 ユニゾンの立場としては、「シダックスが公表した22年9月5日付の意見表明報告書によれば、シダックスとしては、第三者提案が真摯な提案ではないという評価はしておらず、オイシックスとの協業案と第三者提案との比較検討が必要と考えている。ユニゾンファンドとしては、このような状況のもとでは、本公開買い付けの実施及びこれに対する本普通株式の応募には、インサイダー取引規制に抵触する懸念があると、引き続き考えている」とのことだ。

 また、ユニゾンはなぜオイシックスが公開買い付けに踏み切ったのかに関して、「本公開買い付けに係る22年8月30日付の公開買付届出書によれば、22年8月19日にシダックスにおいて開催された、シダックス代表取締役・創業家である志太勤一氏による、本公開買い付けに関するシダックスの取締役会全員及び監査役全員に対する報告会において、第三者提案が撤回され、または真摯な提案でないことが判明した旨を報告したことなどから、オイシックスとしては、本公開買い付けはインサイダー取引規制に違反しないと考えているとのこと」と把握している。

 第三者提案とは、コロワイドの提案だ。ユニゾンの回答から推察するには、8月19日に志太社長が報告会でコロワイドの提案について却下し、全員が了承したと、オイシックスは考えた。それに対して、取締役会は了承してなかったと、後日9月5日に表明し、ユニゾンも公開買い付けに応じないことにした、ということになるのだろうか。

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