企業に上から目線の「カスハラおじさん」が、大量発生しているワケ:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
「お客」という立場を生かして、店のスタッフなどに理不尽な要求をする「カスハラ」が増えているという。さまざまな調査をみると、カスハラの正体は中高年の男性のようで。なぜ、こうした層がむちゃくちゃな要求をするのか。背景に何があるのかというと……。
精神的に追いつめられたおじさん
では、一体どんな人々がカスハラをしているのか。「絶対に逆らってこない相手に暴言や説教するなんて、どうせイキがった若者だろ」と思う人もいるかもしれないが、現実はまったく逆だ。人生経験を重ねて思慮分別がついているはずの「おじさん」が「オレはお客様だぞ!」とイキがっているのだ。
先ほどの交運労協の調査によれば、カスハラを行う利用者の傾向として、男性が86.4%で、加害者の7割が40代以上だった。同様の傾向は、他の調査でも明らかになっている。
例えば、流通・製造業や小売業など、さまざまな業種の労組で組織される「UAゼンセン」(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が20年に実施した調査でも、迷惑行為をしていた客のうち74.8%が男性で、推定年代として50代が30.8%、60代が28.0%、70代以上が11.5%と7割を「おじさん」が占めているのだ。
では、なぜここにきて「40代以上の大人の男たち」がこぞって企業や役所に対して「上から目線のクレーマー」になっているのだろうか。いろいろな見方があるだろうが、個人的には「おじさん」たちが今の日本でかなり辛い立場に追いやられて、精神的に参ってしまっていることが無関係ではないと考えている。
ザ・ブルーハーツの名曲『TRAIN TRAIN』の中に「弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者をたたく」という歌詞があるが、このような「弱者イジメの連鎖」が日本のいたるところで発生している。つまり、「精神的に追いつめられたおじさんたちが、さらに弱い立場のサービス業や交通機関、役所を叩く」という現象が起きているのだ。
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