「もう後戻りはしない」──『家庭の医学』の出版事業を畳んで“第二創業のDX”を敢行した保健同人社の覚悟:創業75年の挑戦(2/3 ページ)
創業75年の歴史を持ち、『家庭の医学』で知られる保健同人社。2022年4月、未病プラットフォーム「みんなの家庭の医学」をローンチしたが、その裏では、時代とともに伸び悩んでいた出版事業を畳む決断があった。
アセットとリソースを「デジタルに再分配」
小林: こういった話はコストカットの文脈で取られそうですが、決してそうではないと思います。保健同人社の持つアセットとリソースを「デジタルに再分配している」という表現が正しいのではないでしょうか。
寺田: おっしゃる通りです。ですから、これまで培ってきた事業をゼロにするのではなく、各事業をデジタルでつなぐという考えでした。その経営判断の中で、今回の未病プラットフォーム構想が生まれた形です
小林: そのプラットフォームについて説明いただいても良いですか。
寺田: もともと保健同人社は、「未病・予防」の領域で事業を行ってきました。その中で構築してきた75年のアセットがあります。例えば、総勢100人の医療専門職、これらを基盤に「家庭の医学」をはじめとした質の高い医療コンテンツが作られてきました。また、長らく健康相談コールセンターを持っており、直接エンドユーザーとの接点もあります。
さらに、企業などに対しても従業員のウェルビーイング向上や健康増進に貢献してきました。例えば直近3年でも2000社ほどと取引しています。これら一つ一つの事業をデジタルでつなぎ、未病・予防を丸ごと推進するプラットフォームを作ろうと考えました。
小林: どのようにつないでいくのか、詳しく教えていただいて良いでしょうか。
寺田: 保健同人社はBtoBtoCのビジネスモデルで長らくやってきました。ミドルBは、健康経営に取り組む企業や、健康保険組合などの保険者、保険会社などの法人企業です。Cはその先にいる従業員や、加入者となります。
今回の未病プラットフォームは、このBtoBtoCをワンストップでつなぐものです。分かりやすいところから説明すると、まずCのエンドユーザーに向けては、ヘルスケアアプリ「みんなの家庭の医学」を提供します。デジタル化された「家庭の医学」などで医療情報を入手できる他、専門家への健康相談や健康リスクに応じた個別ヘルスコーチングも可能です。健康診断の数値分析もできます。
小林: ミドルBに対してはどんなことが可能になるのですか。
寺田: まだ発展途上段階ですが、「みんなの家庭の医学」とクラウドを連携し、従業員や加入者データを分析できるようにしたいと思っています。すると、企業は健康経営の促進のため、保険会社や保険者は疾病予防による医療費抑制のため、精度の高い打ち手を考えられるようになるのです。
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