デジタル化で「うまくいった」「失敗に終わった」 飲食店の決定的な差:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(4/6 ページ)
外食産業のDXの重要性が問われる中、デジタル化をしてうまくいく企業とうまくいかない企業があります。その違いはどこにあるのでしょうか。
「Blank Street Coffee」がDXでつかんだ成功
反対に、ITをフルに活用して外食産業のDXに成功している事例もあります。例えば、今ニューヨーカーの間で流行っているコーヒーチェーン、Blank Street Coffee(ブランク ストリート コーヒー)です。
Blank Street Coffeeは、20年8月、ニューヨーク市ブルックリンのウィリアムズバーグにオープンしました。特徴的なパステルグリーンの小さな電動コーヒーカートで、地元のペストリーやベーグル、コーヒー豆を販売するところから始まりました。
その後、ニューヨークで最もコーヒーショップが多く集まる地域の1つであるワイス・アベニューにも店舗をオープンさせ、わずか2年で地元資本のどの競合店よりも多い40店を市内にオープンさせました。
Blank Street Coffeeの特徴として、スターバックスほど高くなく、ダンキンコーヒーほどチープでもなく、味も値段も「ちょうどいい」ということが挙げられます。16オンス(約470ミリリットル)のアイスラテを例に取ると、ダンキンコーヒーでは3.75ドル、スターバックスでは5.50ドルであるのに対し、Blank Street Coffeeでは4.25ドルという価格帯で、「手頃な値段で、いつもよりちょっと良いものをたしなみたい」という層をうまくつかんでいます。
また、店舗形態も特徴的です。近年のコーヒーショップといえば、スターバックスが広めた「第三の場所」という、友人とおしゃべりをしたり、パソコンを持ち込んで仕事をしたりする場所が思い浮かぶかもしれません。しかし、Blank Street Coffeeはそうではありません。350平方フィート未満の敷地サイズ(喫煙所や簡易的なデリカテッセンのようなサイズ)で、顧客の注文を素早くさばき、店員は顧客サービスに集中できるようにオペレーションが工夫されていることで回転率が高くなるように設計されています。
ブルースターバーガー同様、アプリを活用していることも特徴的で、顧客はアプリを通して事前にオーダーをしておき、カフェに取りに行というスタイルのため、待ち時間も少なくて済みます。
Blank Street Coffeeの強みはコーヒーを作る自動エスプレッソマシンの活用にあります。
このマシンは1時間に700杯、一度に8杯のエスプレッソを作ることができるスイス製のEversys(エバシス)というもので、価格は5万ドル(約710万円)で、平均的なバリスタの年収と同じコストと言われています。
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