全役員を降格、従業員に「楽するな」と喝 がけっぷち百貨店を救った“伝説の男”に学ぶ:従業員エンゲージメント(1/5 ページ)
「百貨店再建請負人」と呼ばれた男がいる。がけっぷちの状況だった西武百貨店を立て直した。どのような手法を用いたのか。
最近、企業の経営者・幹部のみなさんと話をしていると、人の問題、マネジメントで悩んでいるケースが多いように感じます。これまでも存在していた問題ですが、コロナ禍によって複雑化しているようです。
国は企業の人的資本経営強化に向けて力を入れると宣言しています。企業でもリスキリング、再教育の必要性が叫ばれるようになっています。日本経済を再び成長軌道に乗せるためには、社員教育と社員の能力を引き出すマネジメントが欠かせません。
労働集約型産業である小売り・サービス業においては、マネジメントは欠かせないテーマです。これから必要なマネジメントとは何なのか。これから必要とされる社員の能力とは何なのか。それらをどのように引き出していくのか。小売り・サービス業のコンサルティングを30年以上にわたり続けているムガマエ株式会社代表の岩崎剛幸が分析していきます。
対面コミュニケーションの減少で社員のやる気ダウン
コロナ禍でオンライン会議などが増加し、仕事が効率的になった一方で、対面のコミュニケーションが激減し、社員のやる気が低下しているという企業の相談をよく受けます。
対面コミュニケーションの減少で、企業の求心力が低下しているのが一番の課題でしょう。上司と部下、同僚同士、対顧客との間で交わされていた雑談や飲みニケーション、軽い打ち合わせが減少し、会社と社員のつながりが薄くなっているのです。
つながりが薄くなると、社員の動向を把握しにくくなります。社員は会社から気持ちが離れ、離職や転職という状況にもつながります。そこで、世間では盛んに従業員エンゲージメントが重要だと叫ばれているのです。
従業員エンゲージメントとは「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」を意味します。ポイントは以下の4つです。
世界的な組織コンサルティングファームであるコーン・フェリーでは、企業の業績と従業員エンゲージメントとの間には、明確な相関関係があると指摘しています。
従業員エンゲージメントが高くなるように努力している企業の業績が良く、従業員エンゲージメントが低下すると、その会社の業績にも影響を及ぼすということです。
この図を見ると、直近の売り上げにエンゲージメントによる大きな差はないですが、5年スパンで見るどうでしょうか。売り上げも、利益も、従業員エンゲージメントの高い企業と低い企業では大きな差があることが分かります。特にEPS(1株当たり純利益)の平均成長率では6ポイント近い開きがでています。従業員エンゲージメントは業績に大きく影響するのです。だからこそ、経営者が先頭に立って、社員のエンゲージメントを醸成する取り組みを開始しないと、企業は存続すら危うくなるといえるのです。
経産省が22年5月にまとめた「未来人材ビジョン」というレポートの中に、従業員エンゲージメントの国際比較があります。この調査によれば、日本は世界全体の中でもエンゲージメントは最低水準に位置しています。日本の会社と従業員は、互いに信頼し、貢献し合う関係にはなっていないということです。
私はこの「エンゲージメント」という言葉を15年にグーグル本社を訪問した際に初めて聞きました。エンゲージメントがなければ組織は作れないという危機感を同社では持っていることを聞き、とても驚きました。「去る者追わず、優秀な人材は外からとればいい」という発想だろうと思っていましたが、実は、どの企業よりも社員のエンゲージメントを高めることに力を入れていることが分かったからです。
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