全役員を降格、従業員に「楽するな」と喝 がけっぷち百貨店を救った“伝説の男”に学ぶ:従業員エンゲージメント(2/5 ページ)
「百貨店再建請負人」と呼ばれた男がいる。がけっぷちの状況だった西武百貨店を立て直した。どのような手法を用いたのか。
従業員エンゲージメントが落ちていた百貨店
私はこの2年半の間、従業員エンゲージメントが低下したことで業績を落とした企業事例を見るたびに、1990年代の西武百貨店のことを思い出していました。
22年7月に残念ながらお亡くなりになった元西武百貨店社長の和田繁明さんという方がいます。さまざまな問題を抱え、瀕死の状態に陥っていた同社を救ったのが和田氏です。
和田氏は社長として西武百貨店の再生を実現。その後、セゾングループの解体、そごうの民事再生を早期に実現させ、「百貨店再建請負人」と呼ばれました。
当時の西武百貨店従業員のエンゲージメントは最悪でした。従業員たちに危機感を醸成し、会社の根底に眠る本質的な問題を見つけ出し、それを全社員の責任で解決に向けて動いていった結果、96年2月期には4期ぶりに黒字化。その後、4期連続で増収増益を達成し、再建を果たしたのです。
その歴史を紐解いていくと、トップのマネジメント次第では従業員エンゲージメントが高まり、企業が復活していくのだと分かります。
和田氏が西武百貨店に戻ってからまとめた「西武百貨店白書」という資料から、停滞感のある小売り・サービス業のマネジメント改革のヒントを見つけたいと思います。
企業危機を招いたのは経営陣の責任
和田氏が西武百貨店に入社したのが1957年です。35歳で取締役、40歳で常務と出世していますが、83年にレストラン西武(現在のコンパスグループ・ジャパン)社長へ出向となります。92年6月、医療機器事業部の架空取引事件が発覚。その立て直しのため、和田氏は代表取締役会長として西武百貨店に復帰しました。
和田氏は西武百貨店に戻るにあたり、1カ月間にわたって自らの目と耳で社内のさまざまな状況を調査。ヒアリングや対話を繰り返し、会社の実態を把握します。そして、92年8月に全役員、幹部を集めた「92年度サマーレビュー」という合宿を開催し、西武百貨店の危機的状況についての自身の考えを共有したのです。
白書の冒頭で和田氏は次のように述べています。
「私は、水野社長以下全役員、幹部らを前にして、西武百貨店の危機的状況についての考えを率直に述べ、責任の所在を指摘し、『危機』の直視、『責任』の自覚、そして反省を促したのです」(出所:西武百貨店白書より一部抜粋)
このサマーレビューで幹部に語った内容を書き起こし、92年10月には社内報「かたばみ」特別号として32ページにわたる「西武百貨店白書」を刊行。従業員はじめ、関連会社社員全てと実態を共有したのです。
白書では、経営陣の怠慢を指摘しています。まさに歯に衣着せぬ内容で、和田氏が幹部に向けて話をした内容が、ほぼそのまままとめられています。そして、人事、組織、風土改革による経営再建を提言するレポートとなっています。
この内容を実現させるために、93年4月には全役員の降格人事を実施。水野誠一社長は副社長に、和田氏は社長に降格するという厳しい人事体制から同社の改革をスタートさせました。
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