“断面萌え”で人気の「フルーツ大福」「フルーツサンド」 心配なのは、過当競争の行方:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)
果物の摂取量が減少している一方、「フルーツ大福」「フルーツサンド」がブームになっている。筆者は過当競争に陥っているのではないかと指摘する。生き残るには差別化戦略が必要だ。
フードロスに取り組むフルーツ大福専門店
「金沢フルーツ大福 凛々堂」は20年11月、東京都墨田区に1号店であるスカイツリー店を、東京スカイツリーの近くにオープン。現在、直営・FCを合わせて12店を日本各地でチェーン展開している。金沢には1店、金沢広坂店がある。
母体であるトゥモローという会社は、大阪で「令和ホルモン」という、SNS映えする肉を山盛りにした丼などを売りにする焼肉店を経営していたが、新型コロナの影響で売り上げが3分の1にまで急落。そこで起死回生のビジネスとして、糸で切った断面が鮮やかでSNSに向くフルーツ大福に着目したという。飲食店と異なり、テークアウトの専門店であり、店内飲食を自粛する必要もない。来店した人は、何個か買っていくので、利益率も高くなると踏んだ。
「凛々堂」のFCオーナーでも注目されるのは、高校生の薄井華香氏が起業した、東京都世田谷区の経堂店。21年6月にオープンした。薄井氏の実家は金沢の青果仲卸で、凛々堂と取引をしていた。高校に進学するタイミングで上京し、以前から興味があったフードロス問題に取り組もうとフルーツ大福専門店を開業した。
薄井氏は、皮に少しの傷があるだけで、味には全く問題がない果物が大量に廃棄されていくのを幼少の頃から目の当たりにしてきた。廃棄されるもったいない果物を有効活用する実践として、フルーツ大福に着眼したのだ。
場所を経堂に選んだのは、東京農業大学に近く、食に関心が高い土地柄というのもあったらしい。
凛々堂の各店は、金沢の上質な甘さ控えめの白あんを使用。伝統的な杵(きね)と臼でつくる餅はもち米本来の甘みがある。果物は高級店、百貨店で出回る優品・秀品、産地直送品を厳選している。
このような基本的な商品のフォーマットはあるが、店によって独自の商品を出しても良い。経堂店では、石川県の特産品を製品化している。例えば、季節商品として「食べる宝石」といわれるブドウ「ルビーロマン」の大福が購入できる。ルビーロマンは初競りが一房140万円にもなるという超高級フルーツ。大粒で糖度は「巨峰」並み、酸味が少なく食べやすい味だ。1個850円と高価だが、一食の価値はある。同店では、ルビーロマンの大福に限っては、サイズが小さいこともあり、糸で切らず丸ごと食べることを推奨している。
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