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プラチナバンドで楽天モバイルが妥協案、「非常時の事業者間ローミング」の検討も開始房野麻子の「モバイルチェック」(3/4 ページ)

9月26日週は総務省で注目の会合が2つ行われた。1つは楽天モバイルがプラチナバンドの割当てを求めている「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース(第12回)」、もう1つはKDDIの大規模通信障害を踏まえて立ちあげられた「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会(第1回)」だ。

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各種ローミングの実現可能性と課題

 9月28日には、「非常時における事業者間ローミング等」の検討会も開催された。7月に発生したKDDIの大規模通信障害を踏まえて立ちあげられた検討会で、有識者や携帯電話事業者に加え、オブザーバとして緊急通報を受ける警察庁、消防庁、海上保安庁も参加した。

 自然災害や通信障害で携帯電話が使えなくなっても、臨時的にほかの事業者のネットワークを使う「事業者間ローミング」などにより、通信できる環境を整備することを目指す。特に110番、119番、118番といった緊急通報については、約6割が携帯電話からの発信となっており、「非常時でも確実に緊急通報受理機関に通報できる仕組みの検討が急務」としている。

 第1回会合では、総務省が海外事例などを交えながら検討事項をまとめた。また、電気通信事業者協会(TCA)、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが、事業者間ローミングの実現に向けた可能性、方向性について考えを説明した(記事参照)。

 TCAは、キャリア4社と災害対策の中の1つとして、また、ウクライナの戦時下で事業者間ローミングが活用されている状況、大規模通信障害で緊急通報ができなかった状況も考慮して、事業者間ローミングの検討を行ってきたという。それによって明らかになったポイントを説明した。

 まず、緊急通報のみのローミングでは、呼び返し(警察など緊急通報受理機関からの折り返し)ができないことが大きな課題になる。

 一般の電話やデータ通信も可能にするフルローミングでは、受け入れる側のネットワークが混雑する可能性が高くなり、重要な通信を優先するために規制をかける場合、ユーザーを区別できず、本来影響がないはずのユーザーにも使いにくくなる状況が発生する。ローミング導入までで事業者間での調整項目が多く、時間がかかる可能性も高い。また、加入者データベースなどのコア設備付近で障害が起きたときは、ローミングできない可能性が高い。

 なお、米国では2022年7月に、災害時の事業者間フルローミングを義務化する制度を創設。韓国でもSKテレコム、KT、LGの3社が災害時の国内ローミングのシステムを構築する事業者間協定を19年4月に締結し、運用を開始しているという。


緊急時の事業者ローミングについて海外の事例

 SIMなしでの緊急通報は、受理機関に電話番号が通知されないことになるので、いたずらや、DDoSならぬTDoS(Telephony Denial of Service)攻撃のリスクがある。呼び返しもできず、法令・省令などを順守できない。ただ、海外では緊急通報のローミングを実現しているところが多い。フィンランドではSIMなし端末からの緊急通報が可能で、誤用や不正利用の防止のため、携帯電話の製造番号(IMEI番号)が緊急通報受理機関側に通知される仕組みがあるという。

 複数の事業者とオンライン経由で契約やSIMの発行ができ、あるキャリアに障害が起こった際は別のキャリアに切り替えて使うデュアルeSIMも検討されている。この場合はユーザーが料金を支払うことになり、デュアルeSIM対応の端末も必要だ(iPhone 13シリーズ以降は対応)。電話番号の枯渇も懸念される。


各ローミングとデュアルeSIMの課題

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