日本で本当にECは拡大しているのか? EC化率が8%台でとどまる:世界4位だが……(1/3 ページ)
「Eコマースの時代」「コロナでネットショッピングが顕著に」「買い物はネットで」など、いまやインターネットでの取引なくしてビジネスは成立しないとでも言うような勢いだが、本当にそうなのだろうか。
経済産業省は、「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、日本の電子商取引市場の実態を取りまとめた。
調査によれば、令和3年の日本国内のB2C-EC市場規模は、20.7兆円(前年19.3兆円)と、前年比7.35%増だったという。世界各国との比較でいけば、日本のEC市場規模は中国、アメリカ、イギリスに続いて4位となっている。この発表を受け、日本においてもECが非常に成長しているという論調が目立つ。
しかし、果たしてそうなのか。EC化率(全ての商取引金額に対する、電子商取引市場規模の割合)はわずか8.78%で、前年より0.7ポイントの上昇にとどまっている。つまり、ECの市場規模では世界4位だが、世界各国に比べればEC化率の伸び率は低く、ECの市場規模でも今後は世界においてもシェアは少なくなっていくのではないか。
なぜ日本のEC化率は伸びないか
これだけECの隆盛が言われるなかにおいても、EC化率が1割にも届いていないのはなぜだろうか。アメリカでも13%台で推移していると言われ、日本はどう考えてもEC化率が低いままだと言わざるを得ない。
個人消費の伸び悩みに対してECの伸びは顕著であり高い成長率だと評価する向きもあるが、世界でも類を見ない充実した物流網やデジタル端末の普及率、約85%と言われるクレジットカードの保有率(18歳以上)、そしてきめ細かいサービスのノウハウを考えれば、世界各国の中でもEC化率が低くなることはなさそうに見える。
実際に、商品アイテムごとに見れば、「書籍、映像・音楽ソフト」(46.20%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(38.13%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(28.25%)となっており、アイテムによっては高いEC化率が実現している。この事実を考えれば、2割程度のEC化率となっていてもおかしくない気もする。
関連記事
- 東芝に売られた事業が軒並み好調な事情
2016年以降、東芝に売られた事業は、医療機器事業、白物家電事業、スマートメーター事業、メモリ事業、パソコン事業、テレビ事業と目白押しだ。そしていずれも見事に独り立ちして成長しているのだ。その意味を考えてみたい。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 「大量閉店」に追い込まれたのに、なぜクリスピーは“復活”したのか
クリスピー・クリーム・ドーナツの売り上げが好調だ。売り上げが落ち込んで大量閉店に追い込まれたのに、なぜ復活できたのだろうか。取材したところ、2つの理由が浮かんできた。 - なぜ山善の「焼肉グリル」は25万台も売れたのか 開発のヒントが面白い
山善の「焼肉グリルシリーズ」が売れている。第1弾が登場したのは、2020年7月のこと。その後、第2弾、第3弾を投入し、22年7月現在で累計25万台を突破した。なぜホットプレートがこれほどウケているのだろうか。人気の秘密を取材したところ……。 - ウェンディーズは「いま」どうなっているのか わずか1店舗からの“ウルトラC”
都市部を中心に「ウェンディーズ」の店を見かけるようになった。バブル時、100店を超えるほどの勢いがあったチェーン店はいまどうなっているのだろうか。同社の会長と社長を取材したところ……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.