日本で本当にECは拡大しているのか? EC化率が8%台でとどまる:世界4位だが……(2/3 ページ)
「Eコマースの時代」「コロナでネットショッピングが顕著に」「買い物はネットで」など、いまやインターネットでの取引なくしてビジネスは成立しないとでも言うような勢いだが、本当にそうなのだろうか。
中国やアメリカと違い、国土が狭い分、すぐに買い物に行けるという理由はかつてから言われたが、コロナ禍で家から出るなと言われたにもかかわらず、さほどのEC化率の増加を見せなかったことを考えれば、それも違うのではないかと思える。日本人固有の「きれい好き」「清潔」の価値観を低いEC化率の理由に挙げる人もいる。
確かに、徐々に増加しているとはいえ食品関連のEC化率が低いことを考えると、自分の口に入れるものに関しては自分の目で見てからでないと買わないという日本人の価値観の側面はあるかもしれない。ただ、インスタント食品やレトルト食品に対する意識調査を見ると、日本人全体として「食への意識」が諸外国と大きく違うとも思えない。
ユーザー側、企業側からの要因
さまざまな理由が考えられると思うが、ユーザー側、企業側、商習慣の観点から見てみよう。
まず、ユーザー側からしてみれば、特に都市部において、買い物に出かけることに不自由がないことがひとつ挙げられるだろう。都市部においては歩けばすぐにコンビニがあるような状況であり、配達の日時指定がある程度できるとはいえ、欲しいと思ったときに手に入る利便性は捨てがたい。こうした物販流通網の整備があればECの必要性もそれほどでもないかもしれない。
とはいえ、もっとも大きいのは、実質賃金が増えないなかでの消費意欲の低迷ということだろう。通販(EC)ということは、物流コストがどうしてもオンされるものであり、少しでも節約しようと思えば、自分で買いにいくしかない。好きな飲食店には並ぶことも辞さない日本人の特性を考えれば、少しでも余裕が生まれれば、いつどこでECのブームが起こってもおかしくはない。
関連記事
- 東芝に売られた事業が軒並み好調な事情
2016年以降、東芝に売られた事業は、医療機器事業、白物家電事業、スマートメーター事業、メモリ事業、パソコン事業、テレビ事業と目白押しだ。そしていずれも見事に独り立ちして成長しているのだ。その意味を考えてみたい。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 「大量閉店」に追い込まれたのに、なぜクリスピーは“復活”したのか
クリスピー・クリーム・ドーナツの売り上げが好調だ。売り上げが落ち込んで大量閉店に追い込まれたのに、なぜ復活できたのだろうか。取材したところ、2つの理由が浮かんできた。 - なぜ山善の「焼肉グリル」は25万台も売れたのか 開発のヒントが面白い
山善の「焼肉グリルシリーズ」が売れている。第1弾が登場したのは、2020年7月のこと。その後、第2弾、第3弾を投入し、22年7月現在で累計25万台を突破した。なぜホットプレートがこれほどウケているのだろうか。人気の秘密を取材したところ……。 - ウェンディーズは「いま」どうなっているのか わずか1店舗からの“ウルトラC”
都市部を中心に「ウェンディーズ」の店を見かけるようになった。バブル時、100店を超えるほどの勢いがあったチェーン店はいまどうなっているのだろうか。同社の会長と社長を取材したところ……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.