日本で本当にECは拡大しているのか? EC化率が8%台でとどまる:世界4位だが……(3/3 ページ)
「Eコマースの時代」「コロナでネットショッピングが顕著に」「買い物はネットで」など、いまやインターネットでの取引なくしてビジネスは成立しないとでも言うような勢いだが、本当にそうなのだろうか。
ECを提供する企業側から見れば、相変わらず大きいのは、経営陣のECビジネスに対する理解の甘さではないか。これも昔から言われていることだが、ECを甘く考えすぎている。「ホームページさえ作れば良い」「適度なプロモーションさえ行っていれば良い」「担当は数名で十分、受発注管理や配送管理、物流など既存のシステムで十分」「Amazon、楽天などのプラットフォームに出店すれば良い」などの認識だろう。
それで新たなビジネスが成長するはずがないというのは誰でも思うことなのだが、企業側のECに対する投資金額や人材開発・採用の面を見ると、疑わしくなってくる。
そして、もっとも大きな問題は崩すことの難しい商習慣だろう。「メーカー(商社)〜問屋〜小売店」が強固に結束する商流を壊してまでECを本格的に行っていくことは相当難しいのではないか。実際、高いEC化率を達成している商材の背景には、日本の商習慣の壁に関係なく展開できる外資資本の企業の存在が大きい。
さらに、企業内での雇用の問題もある。ECに本格的に進出しようと思えば、新たな人材の採用と商流の変革による余剰人員の解雇がどうしても不可避となる。これも現在の日本の企業ではほぼ不可能な話だ。
このままでは、B2Cにおける日本のECが大きく飛躍することはおそらく難しいだろう。この流れを変えるには、ECとは、これまでの商習慣とはまったく別のビジネスモデルであることを十分に理解し、自分の会社にとってECはどうあるべきかをいち早く戦略としてつくりあげていくことが必要となる。EC化率の上昇が日本の経済成長に寄与するのは間違いのないことであり、これからの経営者の大きな課題だ。(INSIGHT NOW! 編集部)
関連記事
- 東芝に売られた事業が軒並み好調な事情
2016年以降、東芝に売られた事業は、医療機器事業、白物家電事業、スマートメーター事業、メモリ事業、パソコン事業、テレビ事業と目白押しだ。そしていずれも見事に独り立ちして成長しているのだ。その意味を考えてみたい。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 「大量閉店」に追い込まれたのに、なぜクリスピーは“復活”したのか
クリスピー・クリーム・ドーナツの売り上げが好調だ。売り上げが落ち込んで大量閉店に追い込まれたのに、なぜ復活できたのだろうか。取材したところ、2つの理由が浮かんできた。 - なぜ山善の「焼肉グリル」は25万台も売れたのか 開発のヒントが面白い
山善の「焼肉グリルシリーズ」が売れている。第1弾が登場したのは、2020年7月のこと。その後、第2弾、第3弾を投入し、22年7月現在で累計25万台を突破した。なぜホットプレートがこれほどウケているのだろうか。人気の秘密を取材したところ……。 - ウェンディーズは「いま」どうなっているのか わずか1店舗からの“ウルトラC”
都市部を中心に「ウェンディーズ」の店を見かけるようになった。バブル時、100店を超えるほどの勢いがあったチェーン店はいまどうなっているのだろうか。同社の会長と社長を取材したところ……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.