批判にめげず 「イカキング」を大化けさせた製作者の意地とプライド:リアリティを徹底追求(2/4 ページ)
石川県能登町のイカの巨大モニュメント「イカキング」が注目の的となっている。完成当初は「税金のムダ遣い」などと批判されたが、町は建設費を大きく上回る6億円の経済効果があったと発表し、驚きが広がった。前評判を覆すイカキングの“大逆転劇”はなぜ起きたのか。
――大迫力のイカキングはどのようにしてアイデアを練ったのでしょうか
近村: 町が考えた「食うか喰われるか」といったコンセプトがありました。人に食べられるイカの気持ちになって、イカに食べられるのを疑似体験できるモニュメントにしたいということでした。これをどうやったら表現できるか社内で議論し、生きているイカをそのまま表現したいと考えました。
高橋: 町からは、とにかくリアリティを求められていました。大きさや高さ制限がある中で、どうすればより迫力ある形ができるのか、本物のスルメイカを見ながら、模型を何度も作りました。
――模型とはどのようなものでしょうか
近村: 粘土を用いて、実際の40分の1ぐらいのサイズで作りました。例えば、腕の形を作って町の担当者に確認してもらう。「もっとこうした方がいい」といったアドバイスを受けながら、修正していくという作業を繰り返しました。耳の形などはイカの専門家にも協力を得て、忠実に再現しました。
「これはイカ焼き」「死んだイカ」難しかった配色
――最もこだわった部分や見どころはどこでしょうか
高橋: 全部ですね(笑)。遊具的な要素を持たせたいという町の思いもあったので、口を開くことで、イカの中に潜って口から顔を出せるようにしたり、耳の部分から登って腕に巻き付いたり、ぶら下がったりできるようにしようと考えました。このため、実際のモニュメントでは、耳の部分を少し下げ、頭の部分を浮かせたような形状になっています。
近村: 本来のイカの泳ぎ方としては、耳を下にして口の部分が上がっているのは不自然なのだそうです。しかし、私たちは、仮にイカが地上に上がってきて人間を襲うとしたら、あの形になるのではないかと考えました。
高橋: ほかにも、支えや補強材などを見せずに、イカのフォルムだけで迫力感のある造形にすることを意識しました。吸盤やクチバシ、肌の斑点の表現、目の大きさなど、細かい部分も見た目が気持ち悪くならないように、リアル感を出すことにこだわりました。中でも目は生きている感じを出すポイントで、光沢感を出すためにラメを入れて仕上げました。
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