リクルートの週休約3日制 “休める組織”を実現できたワケ:取得率98%(2/2 ページ)
リクルートは2021年4月、年間の休日を145日とする週休約3日制を導入した。一般的な週休3日制とどのような点が異なるのか? また人事部が考案した”休ませる仕組み”が現場に与えた影響とは?
フレキシブル休日を使い切れない人もいる?
フレキシブル休日の導入に際し、蝦名氏が懸念したのは「導入した制度を利用してもらえないのではないか」ということだった。
蝦名氏は「リクルートの社員には、働き始めると没頭してしまう人が少なくない。フレキシブル休日で休みを増やしたものの、休日出勤をする人や休日分(15日)を消化しきれない人が出てくる可能性も考えた」と言う。
そこで人事部が編み出したのが、上半期(4月)と下半期(10月)の初めに、あらかじめフレキシブル休日を設定してもらうという方法だ。半年先の休日を決めるのは難しいと思われるが、蝦名氏は「もちろん、そのときの状況で(休日を)動かしてもらって構わない。休むことを先に決めてもらい、事業部・チームにはその前提で動いてもらう。まずは休むことに慣れてもらうのが重要だった」と、フレキシブル休日の導入時を振り返る。
この方法は一定の効果を上げており、2021年3月度前期におけるフレキシブル休日の取得率は98%を記録。また、フレキシブル休日とは別に取得できる年次有給休暇の消化率は56%になった(前年度は非公開)。
休日が増えて休日出勤が減り、年間の総労働時間が短縮されて有休消化率も向上と聞くと、気になるのは生産性だ。リクルート広報の合田知佳氏によれば、一つの案件を2人以上で担当することで、誰かが休んでも支障なく業務を進められる体制を作ったそうだが、それでは各自の業務が増えてしまう。
「業務の引き継ぎなど、一つの案件を複数人で担当することへの初期的な負荷はあった。しかし結果的にはきちんと休めるようになり、自分が休みのときも顧客に対応してもらえる体制ができた。案件を1人で抱えず、組織として担保することが各自の生産性の向上にもつながったと思っている」と合田氏。
「業務内容や担保の方法は現場によって異なるが、例えば従来の広報業務は『この人の担当はこの領域』と1人で担当することが多かった。それを2人担当制にし、ツールを活用して情報共有するようにした。それにより、『あの人がいないと対応できない』といった状況はなくなりつつある」(合田氏)
また蝦名氏は「休んでいる人の業務を組織としてどう担保するか各現場で考え、試行錯誤してもらえたのが大きかった。自分でやることと、組織に担保してもらうことのタスク配分が今までよりも明確になった」と付け加えた。
週休3日制は生産性や給与体系とセットで語られることが多いが、リクルートの事例を見れば、働き方改革と生産性の向上は両立すると分かる。フレキシブル休日は、週休3日制の理想形とも言えるだろう。
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