「もはや学生が憧れる企業ではない」 NTT東日本の危機感が生んだ”実務型インターン”:応募者数は約1.5倍に(1/5 ページ)
NTT東日本は採用に対して「学生の憧れの企業から年々離れていっている」という危機感を抱いていた。そこで新卒採用に関わる重要な要素であるインターンの変革に乗り出した。
「学生の憧れの企業から年々離れていっている」――NTT東日本でインターンシップの設計を担当する総務人事部 人事第二部門 海外研修担当の伊藤信吾氏(取材当時)は自社の採用力低下に対する懸念を示した。
伊藤氏はもともと新規事業関連の業務を担当していたが、MBA留学の準備期間として2年前に総務人事部に異動となった。留学間近のタイミングでコロナ禍が直撃。留学を一時断念し、総務部への残留を決断した。採用業務を通じて自社の魅力付けが急激に弱くなっている現状を見せつけられ、その危機感から採用改革に着手することを決意したのだ。
NTT東日本が「学生の憧れ」でなくなったと感じ始めたのは3〜4年前。以前に比べ、東京大学や京都大学などの高学歴と呼ばれる学生がインターンに参加しなくなった。コンサルや総合商社など、個人の力が鍛えられる企業に彼らの興味は移っていると伊藤氏は話す。
「京大出身ということもあり、異動前からOB・OGとしても活動していましたが、この1〜2年は特に顕著でした。自分の力、つまり働きながら個の力が高められるかどうかを企業選びに重視する学生が例年になく増えていたからです」(以下、コメントは全て伊藤氏)
実際に、就活メディアを運営するワンキャリアが2022年6月に公開した「2024年 東大・京大就活人気ランキング」では、上位10社の業界を「コンサル・シンクタンク」「商社」が独占している。
能力に自信を持つ学生も多いため、成果や実力に応じて裁量が広がるスタートアップや新卒カードを使わずにあえて起業で勝負する学生なども増えていると伊藤氏は説明を続ける。
「今はサーバーも自分で立てられますし、スマートフォンがあればビジネスが簡単に始められる時代になりました。昔だったら、NTT東日本は莫大なアセットを持っていて、この会社にいたら大きなビジネスができるだろうと思えたのかもしれません。しかし、その考え自体が今の学生たちにはあまりにも安定志向過ぎて、働く場としても面白く映りません」
就活生にあたる00年前後生まれの24卒や25卒の学生は、いわゆる「Z世代」と呼ばれる。Z世代を研究する電通若者研究部によると、「これまでの当たり前が通用しない、正解のない時代に育った世代」だという。先行きが見えない時代を生きてきた彼らは、会社に人生を預ける気なんてさらさらない。ファーストキャリアですら転職前提で判断する。
こうした学生たちをNTT東日本へ振り向かすにはどうしたらいいのだろうか。そこで伊藤氏が着目したのは、新卒採用における学生の入口となるインターンを変えることだった。「プログラム内容と実務との乖離(かいり)が大きすぎる。まさに実業務ガチャになっているのではないか」とこれまでの自社インターンに危機感を覚えていたことも改革を後押しする要素となった。
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