月給35万円のはずが、17万円に……!? 繰り返される「求人詐欺」の真相:働き方の「今」を知る(1/6 ページ)
求人票に記された情報と職場実態が大きく異なる、「求人詐欺」が後を絶たない。洋菓子店マダムシンコの運営会社の元従業員は「月給35万円との約束で入社したが、実際は月給17万円だった」として労働審判の申し立てをしている。求職者を守る法律や求人メディアの掲載基準もあるにもかかわらず、なぜ求人詐欺はなくならないのか? ブラック企業アナリストの新田龍氏が実態に迫る。
なぜネット上には「ブラック企業を見抜く方法」といった情報が溢れているのか。
その背景の一つには、求人票に記された情報と職場実態が大きく異なる、いわゆる「求人詐欺」が横行しており、入社後「こんなはずじゃなかった……」と後悔してもなすすべがなく、求職者が泣き寝入りを強いられている現状がある。
月給35万円のはずが、17万円に……。マダムシンコの虚偽求人
10月初頭、人材ビジネスや求人広告ビジネス関係者を騒がせるニュースが飛び込んできた。
大阪土産、お取り寄せスイーツとして人気を博している「マダムブリュレ」(バームクーヘンの上部をクレームブリュレのようにキャラメリゼした洋菓子)の製造元、洋菓子店「マダムシンコ」の運営会社(カウカウフードシステム)が元従業員から、求人詐欺の疑惑で労働審判の申し立てを受けたというのだ。
元従業員の男性は21年3月、求人サイト「インディード」経由で、マダムシンコの菓子製造職に応募した。当該サイトには「月給35万円以上(残業代含む)」と記載されており、採用面接の場でも「3カ月間の試用期間後の月給が35万円」と口頭で説明されていたという。
男性は正式に採用されたが、勤務開始1カ月後に渡された雇用契約書には「基本給16万〜25万円」と記されており、残業代の明確な記載はなかった。その際男性は上司に、求人サイトと面接時に示されていた「月給35万円」に関して口頭であらためて確認したうえで署名。しかし試用期間中25万円だった月給は、試用期間終了後に約17万円と、当初提示されていた金額の約半分になってしまったのだ。
男性は「求人サイトの内容で同社と合意した」と主張。雇用契約書に署名する際も「月給の減額については明確な説明がなく、同意もしていない」とし、1年分の未払い賃金約200万円の支払いを求めてマダムシンコ側に労働審判を申立てたという経緯である。
労働審判の中で、マダムシンコ側は求人サイトの広告内容が実態と異なっていたことは認めた。しかし「広告は閲覧者を増やすために給与額を高く表示したものにすぎない」などと主張し、「雇用契約の労働条件ではない」と争う姿勢を示しているという。
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