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月給35万円のはずが、17万円に……!? 繰り返される「求人詐欺」の真相働き方の「今」を知る(2/6 ページ)

求人票に記された情報と職場実態が大きく異なる、「求人詐欺」が後を絶たない。洋菓子店マダムシンコの運営会社の元従業員は「月給35万円との約束で入社したが、実際は月給17万円だった」として労働審判の申し立てをしている。求職者を守る法律や求人メディアの掲載基準もあるにもかかわらず、なぜ求人詐欺はなくならないのか? ブラック企業アナリストの新田龍氏が実態に迫る。

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ブラック企業がはびこる仕組み

 マダムシンコ側の「広告は閲覧者を増やすために給与を高く表示しただけ」との言い分を聞いて、違法行為の自覚が全くない、あまりの自己中心的な主張にあぜんとした関係者も多かったことだろう。

 一般の求職者からも「え!? 求人に載せてる内容って実際の労働条件じゃなかったの?」「何でもアリじゃん……こんなの普通に詐欺だろ」などと、困惑と非難の声が上がっている。筆者も例に漏れず、「ブラック企業が滅びるべき理由がこの一言に凝縮されている!」と怒り心頭に発した次第だ。

 世に言う「ブラック企業」とは、「長時間労働で低賃金、ハラスメントが横行する、労働者にとって報われない会社」を指すが、筆者はさらに「順法意識がなく、アンフェアな競争で私利私欲を追求し、従業員・取引先・地域社会にまで迷惑をかける『ならず者』の会社」もまたブラック企業と呼んでいる。今般のマダムシンコの所業はまさに後者に該当するものといえよう。


順法意識がなく、アンフェアなブラック企業(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 キーワードは「アンフェア」だ。まともな会社であれば労働関連法規を守り、極力残業させず、残業代も社会保険もキッチリ払ってまっとうな経営をする。だが、ブラック企業は法律を無視し、従業員を深夜でも休日でも馬車馬のように働かせ、払うべき割増賃金を払おうとしない。

 すなわち労働力を「安くコキ使う」ことができるので、その分商品やサービスをまともな会社より安く出せる。そうすればコスパ重視の消費者に選ばれ、「アンフェアなことをやっているのに競争に勝ててしまう」という「バグ」が発生する。

 こうやって「悪貨が良貨を駆逐する」状態になれば、まともな経営をしているまともな会社がバカを見る。これでは世の中は良くならないし、誰も報われないことになってしまうだろう。

 今般の求人広告にまつわる話も同様だ。本来求人広告の掲載基準・審査基準は厳しく、まともな会社はその制限の中で少しでも良い条件を出して、意中の人材に注目してもらえるよう、血のにじむような努力をしている。

 そんな中でマダムシンコのようにルールを完全無視した求人が出てきて、あたかも高給かのように誤認させて人材をかっさらってしまったら、まともに努力してきた会社はまんまと出し抜かれることになってしまうわけだ。この事態が放置され、かつ、おとがめもないままなら、どの会社も求人票に真実を書かない地獄のような世界になってしまうだろう。

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